「埋蔵金」騒動が決着したようだ。10月30日に政府・与党がとりまとめた国費5兆円、事業費26.9兆円に上る経済対策の「生活対策」で、財源として「財政投融資特別会計の金利変動準備金の活用等を行う」と明記されたからだ。

財務省に「埋蔵金」はある?ない?

 財政投融資特別会計の資産・負債差額は、2006年度末で17.7兆円。10月27日に開催された財政制度等審議会財政構造改革部会に提出された資料によれば、この17.7兆円は金利変動準備金であり、「各年度の利益を将来の金利変動による損失に備え積み立てているもの」のはず。しかし、この部会終了後に記者会見に臨んだ西室泰三・財政審会長(東証会長)は「異常事態対応のためには、一時的には従来の基本線から外れてもやむを得ない」と述べ、「埋蔵金発掘」にあっさり同意してしまった。

〔? 17.7兆円の金利変動準備金を、景気対策に使ってしまっても大丈夫なのか。
 財務官僚の「ガメ得」なカネを国民が取り返す正義の行いなのか。
 昨年11月21日に自民党財政改革研究会が発表した「中間とりまとめ」では、特別会計の積立金などは「将来の給付等に積み立てているなど、各々に目的や理由が存在する」ため、「『埋蔵金』といったものはない」のではなかったのか。

実は「怪しい」埋蔵金の根拠

 財政投融資特別会計に「埋蔵金」がある根拠を、「埋蔵金存在派」は財政融資の金利リスクが極めて小さいからだと説明する。

 「埋蔵金男」として一躍有名になった東洋大学・高橋洋一教授(元財務官僚)の著書『財投改革の経済学』(東洋経済新報社)をひもといてみよう。「財政融資資金は、金利変動に対して適切なALM(資産負債総合管理)を行っており、本来であれば金利変動準備金は極めて少額ですむはず」と述べておられる。そして、高橋教授は2005年4月27日の経済財政諮問会議に民間議員が提出した「特別会計の改革」と題するペーパー及び付属資料を引用し、同特会の資産負債差額は53兆円で、その現在価値は23兆円だとしている。

 なんだか、23兆円の埋蔵金がまるまる経済対策に使ってしまえそうだが、実はそうではない。