実際に、彼らは北朝鮮に対して、もろ手を挙げて交渉再開のサインは送っていない。国家安全保障担当のジョーンズ大統領補佐官は、ニュース番組の中で「クリントン氏訪朝で、政府は公式なメッセージを送っていないし、受け取ってもいない。3時間のクリントン元大統領との交渉の中で、北朝鮮が得たものは写真撮影だけだった」と述べ、人質解放の見返りに核関連等での譲歩はしていなかったことを強調した。
ただ、オバマ政権は北朝鮮がブッシュ政権後期の2カ国間対話のような協議には応じる準備はある」という発言をしている。これは、6カ国協議の枠内であれば米朝交渉再開は可能という姿勢であり、6カ国協議から一方的に離脱したままの北朝鮮が恐らく望んでいるであろう「純粋な」米国との直接対話ではない。
また、ジョーンズ補佐官は、クリントン氏が金総書記に伝えたとされる「もし北朝鮮が国際社会に参加したいのであれば、今後やるべきことは核兵器を開発することではなく、6カ国協議に戻ることだ」とのメッセージを引用し、オバマ政権の立場を明確にした。
舵取り誤れば、共和党から批判も
クリントン氏訪朝の批判の急先鋒は、ブッシュ政権の核不拡散専門家であり対北朝鮮最強硬派のジョン・ボルトン元国連大使だ。彼は8月4日付のワシントン・ポスト紙への寄稿「Clinton’s Unwise Trip to North Korea(クリントンの北朝鮮への拙い旅)」で、1994年の6カ国協議の枠組み合意にまで遡って批判を展開した。
クリントン政権が、カーター元大統領を事実上の特使として北朝鮮に送り、枠組み合意を成立させたものの、結局、北朝鮮の離脱により不成功に終わったことを指摘。オバマ政権が、当初、世界に向けて「条件なしに交渉する」としたメッセージが結局は成果を挙げていないと批判。今回のような交渉のコストが実際の成果を上回ってしまっていることなどを列挙している。
ボルトン氏の発言は、共和党保守派の基本姿勢を代弁したものだ。支持率に陰りが見えてきたオバマ政権にとっては、2010年の中間選挙に向けて、対北朝鮮問題で舵取りを誤れば、共和党からのこうした批判にさらされることを覚悟しなければならない。


