波乱の2009年相場も年後半を迎えた。海外投資家にとっても下半期のスタートとあって、相応に重要な7月相場だが、この月はマネーフローが変調を来たしやすい月として警戒される時期でもある。

 記憶に新しいところでは、2008年7月11日に原油市況の指標であるWTIは、1バレル=147.27ドルの高値を付けた後に反転し、12月19日の32.40ドルまで暴落を演じた。また、日本株に関しても日経平均が1万8261円の高値を記録したのは2007年7月9日だった。

時価総額はバブル期に迫る水準まで回復

原油先物市場、需要懸念が供給懸念を上回りまちまちの展開

原油先物相場は08年7月に高値を付けた〔AFPBB News

 常に斜に構えることを良しとする我が国のインテリ層には「1万8000円と言っても、バブル期の史上最高値3万8915円の半値にも届いていない」と冷めた論評をする人も多かったように記憶している。

 しかし、この月に東証1部の時価総額は580兆円に達した。過去最大は3万8915円を記録した1989年末の590兆円。あと10兆円、率にすればほんの2%程度で、歴史的な水準だったのである。

 2009年3月10日に日経平均は7000円割れ寸前まで下落し、時価総額は230兆円となった。1年半あまりで350兆円の富が失われた計算になる。1989年末から1992年の8月18日にかけて時価総額が354兆円失われたことがあるが、今回の減価は、その速度の凄まじさを踏まえると、確かに「100年に1度」と言うべきものであったかもしれない。

ベストの投資は11月に買って、6月に売る

NY株が6年ぶりの安値、銀行国有化懸念などで

米国の株式投資には「ベスト8カ月の経験則」がある〔AFPBB News

 さて、米ナスダック市場には「ベスト8カ月の経験則」というアノマリー(=投資理論では説明がつかない規則的な価格変動)がある。毎年11月の月初めにナスダック株(というものがあったとして)に投資し、翌年の6月末に売却し4カ月後の11月に再投資する。すなわち、この8カ月間だけ株を持つということを機械的に続けると、ナスダックが開設された1971年に投資した資金は三十数倍になっているというものだ。

 逆の行動「ワースト4カ月」の株式投資を続けるとどうなるか。毎年7月の月初めに買って10月末に売却ということを繰り返すと、現時点で手元に残っているのは、当初の元本の半分にも満たない金額という結果になる。

 この経験則は株式の委託売買に占める海外投資家の比率が6割程度にも及ぶ東京市場にも有効だ。余談だが、こうした数値を誤解して、あたかも東京市場が外国人に支配されているかのように受け止めている向きもあるようだが、自己売買も含めた全取引に占める彼らのシェアは3割程度である。3月末の保有状況を示す株式分布状況調査における外国人の比率は金額ベースで前年度比4%低下の23.6%だった。

日本にも当てはまるベスト8カ月の法則

 本題に戻り東京市場での有効性の検証だが、我が国でバブル崩壊し「失われた十数年」とされる期間でパフォーマンスを調べてみた。まず「ワースト4カ月」のケース。1990年の7月の月初めに元金100を日経平均に投じて10月末に売るという行動から始めて毎年同じように2008年まで続けた場合、2008年の10月末時点で手元に残っているのは25.7という惨憺たる結果だ。