マット安川 震災後もますます迷走する日本を、「憲法とは何か」から解きほぐそうと試みた今回。憲法学者・小林節さんをお迎えして、このほどようやく成立した復興基本法や政治の混乱、中国や韓国との関係まで、幅広くお伺いしました。

遅れる復興、責任を取れない菅総理は去れ

「マット安川のずばり勝負」ゲスト:小林節/前田せいめい撮影小林 節(こばやし・せつ)氏
憲法学者、慶應義塾大学教授、弁護士。日本海新聞・大阪日日新聞客員論説委員。『憲法守って国滅ぶ』、『そろそろ憲法を変えてみようか』(共著)など著書多数。(撮影:前田せいめい、以下同)

小林 法律というのは、我々国民の権利を制限できる唯一の根拠です。法律にはそういう規制の側面と、もう1つの側面があります。

 今回の震災でそれがよく分かりますが、法律、根拠がないと行政機関は動けません。だから復興が進まない。

 もちろん法律だけではなく、予算とセットになって初めて役所は動けるわけですが、目の前に瓦礫があっても、瓦礫を処理する権限と予算がないと役所は何もできないんです。

 復興基本法については、復興庁という新たな役所をいまからつくっても始まらない。復興特別委員会も本当に腹が立つ。議論しているヒマはないだろう、まず目の前のことを片づけろと。変な国ですよ。

 そもそも平和な時代を前提に作られた災害対策基本法などは、こういう未曾有の経験には対応できない。

 これはそんなに難しい話ではなく、総理大臣が行政の長としてすべての公務員に命じればいいんです。「法律とか予算とか四の五の言わずに、いましなければいけないことを全勢力でやれ」と。

 「管轄や権限はどうでもいい、法律は後から作る、予算もつける」と。そして「その責任は最終的に私が取るから」と言えば、いまごろ瓦礫は片づいているはずなんですよ。

 菅さんはどうして責任から逃げるんですかね。責任を取りたくて総理になったはずなのに、いかに責任を取らないかということばかり考えている。だったらそこに居るなという話です。