味も値段も常識破りの削り節

(静岡県・カネジョウ)

2009.06.02(Tue)鶴岡 弘之

なぜカネジョウの商品は高いのか

 そもそもカネジョウの商品は、量販スーパーに置いてある商品とは、価格帯が違う。削り節で言うと、カネジョウの商品は他の一般的な商品と比べると約1.5倍は値段が高い。

 なぜカネジョウの商品は高いのか。その理由を望月社長は次のように説明する。

 「まず、原料が違います。うちは最高級の原料しか使わない。他のメーカーが買う原料より値段が2倍しても、いい原料ならば値切らずに買ってきます。そうやって買っていると、売る方もうちにはいい原料を優先的に売ってくれるようになります」

左がカネジョウのいわし削り。右はスーパーで売っている他社製品。カネジョウの方が削り方が薄く、ふわふわとしている。油っぽさもない

 「とにかく実際に食べてもらえば、分かると思います」。息子の英幸専務がこう言って、カネジョウの削り節と、スーパーで一般的に売られている他メーカーの削り節を2つの皿に盛り分けてくれた。

 それまでは、各メーカーの削り節にそれほどの違いがあるとは思わなかった。だが、目の前に盛られた2皿の削り節は、見た目も味も、確かにまったく別のものだった。

 他メーカーの削り節は削り方が荒く、1枚1枚が厚くて、おまけに油っ気がある。全体的にべたっとしている。一方、カネジョウの方は削り方が極めて薄く、ふわふわとしている。油っぽさも感じられない。原料を1年間、寝かせて使っているので、油や臭みが抜けるのだという。

 味も、余計なものが感じられない。味の表現というのはなかなか難しいのだが、しっかり味がついていながら、濁っていないのである。岩国の女性が驚いて電話をかけてきたのもうなずける。

 桜エビの加工品にしても、カネジョウの商品はやはり値段が高い。もちろんそれにも理由がある。

 例えば、桜エビの代表的な加工食品に「干し桜エビ」がある。駿河湾で取れた桜エビを富士川のほとりにまいて広げ、天日干し(てんぴぼし)をした食べ物である。

左がカネジョウの干し桜エビ。このようにつぶれていないエビの割合が多い。右は他社製品。つぶれているエビが多い

 まず、カネジョウでは、生でも食べられるような高級な桜エビを使って干すという。また、干す時に「ふるい」を使ってエビをまくのだが、独自に加工した特殊なふるいを使っている。このふるいを使うと、エビが重ならないように薄く広くまけるのだという。

 「エビが重なると、下のエビがつぶれて、臭みが出てしまいます。このふるいでまくとエビが重ならないので、型崩れせず、風味も保てる」(望月社長)というわけだ。

「自分が食べておいしいと思える削り節を作りたい」

 カネジョウは戦前から削り節、桜エビの加工販売を行っているが、こうした販路の絞り込みや、商品の高級化といった路線を築いたのは、現社長の啓一氏である。

 啓一氏は大学を卒業してから地元の銀行に勤めた。そして数年勤めた後、1976年に家業を継ぐためにカネジョウに入社した。27歳の時だった。

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