味も値段も常識破りの削り節

(静岡県・カネジョウ)

2009.06.02(Tue)鶴岡 弘之

 入社した啓一氏が最初に取り組んだのは、削り節の改良だ。当時の削り節は(今でもそうだが)、スーパーで大量に並べて売られる安売り商品だった。そして食べ物として口に入れるものではなく、ダシを取るために使うのが常識だったのである。

 これに対して啓一氏は、「ダシを取るだけではなく、そのままご飯にかけて食べられるような削り節」を作りたいと考えた。目指したのは「自分が食べておいしいと思えるような削り節」。原料と削り方などを試行錯誤しながら改良していった。

 その成果として82年に「細けずり」「おかか」「ふくよ香(現:磯ふぶき)」といった削り節を発売。今でも根強い人気を誇るロングセラー商品となっている。

周囲の反対を押し切って設備を拡充

 カネジョウは充実した生産設備という点でも、異彩を放っている。啓一氏は90年代初頭から、製造工程の一層の効率化と品質向上を目指して、新しい機械をどんどん購入していった。

 しかし啓一氏の試みは、周囲には無謀なものと思われたようだ。バブル崩壊後ということもあり、地元の他の業者からは「あんなに機械を買って大丈夫か」という囁きも聞かれた。

 また、90年代末に小エビ事業への本格的な進出に伴って新工場を建設しようとした時は、父親の庫次会長から「斜陽産業でこれからどうなるか分からないのに、そんなことをして何になる。設備投資の必要はない」と反対された。

 しかし啓一氏は、これがカネジョウが生き残る道と考え、半ば独断で設備の拡充を進めた。「3億円ぐらいは機械に投資したと思います。周りからは随分と反対されました。でも、それがあるから、今、生き残っていられるんです」

 さらにカネジョウでは、他にはない商品を作るため、すべての機械に特殊なチューニングを施し、オリジナルの加工機械に仕上げている。そうした機械はノウハウの固まりなので、社外の誰にも見せられないという。機械の改良は日々続けている。2008年には、マイナス196度の液化窒素ガスを使って、桜エビを瞬間的にバラ凍結する機械も開発した。

探し当てて来てもらえればいい

 前述したようにカネジョウの商品は、大手メーカーの商品のようにどこでも買えるものではない。また、値段も高い。それでも一度口にした人はファンとなってカネジョウの商品を買い続けてくれる。

カネジョウの商品群

 「大量生産すれば、確かに売り上げは拡大するでしょう。でも品質が落ちて、既存のお客さんが離れていってしまう。そういうことだけはしたくありません。知る人ぞ知るメーカーでいいんです。宝探しのように探し当てて来てもらえればいいと思っています」(英幸専務)

 工場に隣接した直営店舗は、幹線道路から奥まった場所にあり、決して分かりやすいとは言えない。確かに「宝探し」という表現が適している。

 そういえば、取材時は約束の時間よりも少し早く着いたので、店舗の商品を見ていた。すると2人連れの主婦が車に乗ってやって来た。店を探し回って、たどり着いたのだろう。「ここよ、ここよ」と言いながら店に入り、2人とも削り節を10袋近く買っていった。

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