米からの帰国女性は季節性のAソ連型、厚労省

水際対策に全力
AFPBB News

メキシコから地球規模に広がり、日本人の感染者も確認された新型の豚インフルエンザ。一時期はマスコミが「パンデミック(世界的大流行)近し」のように報じたが、家禽類を所管する農水省は総じて冷静な姿勢を続けている(5月11日時点)。これは、新型インフルエンザのウイルスが弱毒性の「H1N1」型であり、ウイルスの「媒介者」が大型家畜で輸入時の「水際予防」が比較的容易であるためだろう。昨年の「事故米騒動」で信用失墜した農水省にとって、新型インフル対策で「真価」を問われる局面はまだ訪れていない。

 しかし仔細に点検すると、「悪しきDNA」が維持されている兆候も垣間見え、「消費者を向いた行政」への転換はいまだ実現していないように思う。

【図解】WHOの新型インフル警戒水準、「フェーズ5」へ

WHO、フェーズ5に引き上げ〔AFPBB News

 今回、農水省の「初動」は、手際が良かったと評価すべきだろう。メキシコなどで感染の疑いが伝えられた4月24日の夜、繁殖用の生きた輸入豚を検査する各地の動物検疫所に対し、発熱やクシャミといった症状がある豚にはウイルスチェックを行うよう緊急通知した。世界保健機関(WHO)が新型インフルの警戒レベルを「フェーズ5」(パンデミックが近付いた状況を意味)へ引き上げた30日には、即座に輸入豚の全頭検査を決めた。

 それ以上に目立つのが、豚肉の風評被害を阻止する努力だ。石破茂農水相が率先し、「豚肉は滅菌処理が行われており、問題ない」と再三発言した。大手外食チェーンの松屋フーズがメキシコ産豚肉を使う一部メニューの提供中止に踏み切ると、小売・外食関連の198団体に対して「豚肉の安全性に問題があるような告知や、安全性を理由とした豚肉の販売停止」を行わないよう文書で要請した。

 WHOが豚肉を通じた感染はないと太鼓判を押すことを踏まえれば、農水省の姿勢は間違っていない。しかし、「豚肉擁護」に熱を上げる心理を推察すると、事態は別の様相を呈してくる。

「事故米」問題後も、省内改革「道半ば」

 基準を超える農薬やカビ毒が検出された輸入米を、大阪の業者らが食用として違法転売していた「事故米」問題。昨年9月の発覚直後、事故米がどこに流れ、だれの口に入ったのかに世論の関心は当然集中した。

 ところが、農水省は「健康被害が起きた可能性は低い。業者名は言えない」と流通先の公表を拒否。「人体に影響がないことは自信を持って申し上げられる。だから、じたばた騒いでいない」(太田誠一農水相=当時)、「責任は一義的には食用に回した業者にある。私どもに責任があるとは考えていない」(白須敏朗事務次官=同)など、同省首脳の相次ぐ軽率な発言が顰蹙を買った。