2024年12月23日、世界フィギュアスケート選手権日本代表会見、(前列左から)男子シングル代表の壷井達也、佐藤駿、鍵山優真、女子シングル代表の坂本花織、千葉百音、樋口新葉(後列左から)ペア代表の長岡柚奈・森口澄士、三浦璃来・木原龍一、アイスダンス代表の吉田唄菜・森田真沙也 写真=東京スポーツ/アフロ

(松原孝臣:ライター)

重圧に負けず力を発揮できる要因

 2024年12月下旬に行われたフィギュアスケートの全日本選手権が終わり、世界選手権代表が決定した。

 女子は、坂本花織、千葉百音、樋口新葉、男子は鍵山優真、佐藤駿、壷井達也、ペアは三浦璃来/木原龍一、長岡柚奈/森口澄士、清水咲衣/本⽥ルーカス剛史(条件付き)、アイスダンスは吉田 唄菜/森田真沙也が選ばれた。

 ここではシングルの6人を紹介したい。

 代表への過程は、それぞれだった。

 優勝して女子の3人の中で真っ先に代表を決めたのは坂本。グランプリファイナルでは3位に終わり、帰国後は胃腸炎に苦しんだ。優勝候補筆頭と目されながらも、シニア、ジュニアを含め、追いかけてくる選手たちがいる。安閑としていられる状況ではない。

 それを裏付けるようにショートプログラムではジュニアの島田麻央がトリプルアクセルを成功させるなどして75.58点、千葉も非公認ながら自己ベストを3点以上上回る74.72点と高得点をマークする。でも坂本も78.92点と会心の演技でトップを保った。迎えたフリーでも、わずかにミスはありながら、大差をつけて4連覇を飾った。

 重圧に負けず力を発揮できる要因は、次の言葉にある。

「『つむ(積)』。今までの経験というのもありますし、今シーズンからいろんな挑戦をしてきていろんな経験を積んだシーズンでもあるし、今までの経験がいきたシーズンでもあるので。今年はいいことも悪いことも、『あ、こうしたらいいんだな』と積むことができたので」

 2番目に代表に選ばれた千葉にとっての全日本選手権は涙とともに終わった。

 フリーでは2つ目のジャンプ、トリプルサルコウで転倒。後半のジャンプでも複数の回転不足をとられ、4位で大会を終えた。

「泣かないと思っていたんですけど」

 と切り出した千葉の目は赤かった。

「グランプリシリーズやグランプリファイナルはいい演技でいい結果を残してきたからこそ全日本のフリーのミスは心に響いて、率直に悔しい気持ちがすごく強かったです」

 自身が語るように、今シーズンは一段成長した姿をみせてきた。グランプリシリーズは2戦ともに2位、初めて出場したグランプリファイナルでも2位と表彰台に上がってきた。だから、悔しかった。

 ただ、今シーズンの成長のあとが消えることはない。そして悔しさをばねにしようと考える。

「来シーズンは絶対に4回転を入れてやるぞという気持ちも芽生えてきました。悔しさから得る強さも本当に大事だなと思いました」

 3番目に代表に選ばれたのは全日本選手権で3位となった樋口新葉。北京五輪に出場した翌シーズンの2022-2023シーズンは右すねの疲労骨折により1試合出場したのち欠場、昨シーズン復帰したが苦しんだ。そこかで見事な復調ぶりを示した。

「正直言えば、(表彰台に上がることは)想像できていませんでした。去年のような結果(12位)でずるずると終わっちゃうのかなとも思っていたので」

 フリーを終えたあとは氷上でしばらく動けなかった。

「全部出し切りました」

 全日本選手権に懸けてきた。グランプリシリーズ、グランプリファイナルをそこまでの過程と位置付けていた。今も足は気にしないでいられる状態ではない。その中で練習の量より密度にこだわり、戦略をもって取り組んできた。その成果だ。

「自分が(2021年に)最後に表彰台に乗ってから、ジュニアも含めレベルが上がりました。その中で休養を挟んで、こういう姿を見せられたのはうれしいです」

 と笑顔をみせた。