連載:少子化ニッポンに必要な本物の「性」の知識
秋風のようにそっと忍び寄ってくる老い。
その寂しさが若さを求める。それは、いわば回春剤的効果を指摘する人もいる。
『万葉集巻四(五六三)』に大伴坂上郎女(おほとものさかのうへのいらつめ)は、
「黒髪に 白髪交じり 老ゆるまで かかる恋には いまだ逢はなくに」
(黒髪に白髪が交じる老境に入った今日、これほどの恋に、いまだ出逢ったことがありません)
これは老年となった大伴坂上郎女が人生最高の恋愛に、喜びと戸惑いをと詠ったものだ。
情動的な恋は老若男女を問わず、悦びとときめきが伴うものである。 女性が年上の男性と結婚するのは、古今東西、珍しいことではない。
配偶者選択に関連した進化心理学でよく知られているデイビッド・M・バス博士は、このパターンの普及は人類において普遍的な現象と指摘する。
博士は1989年に「人間の交配に関する調査」を37の文化圏で実施。すると、男性は平均2.66歳若い女性との結婚を望み、女性は平均3.42歳年上の男性との結婚を望んでいるという調査結果が出た。
また、最近の米国勢調査によれば、男性は結婚時、平均して妻より1.84歳年上。再婚する男性は特に若いパートナーを求める傾向がみられる。
中高年男性が若い女性を好むことは自然なのか。それとも社会、文化、経済構造の産物なのか。
ミシガン大学ロー・スクール教授で、反ポルノ活動家の弁護士キャサリン・マッキノン博士は、「年齢差カップルという形態は、恋愛における深刻な不均衡であり、女性の従属によるエロチック化を促す」と指摘する。
また、小説家で社会運動家のスーザン・ソンタグは、1972年のエッセイ、『The Double Standard Of Aging(老化の二重基準)』の中で、次のように主張している。
「若い女性が中高年男性に向けるのは嗜好ではなく、その判断は往々にして自然なものではない」
「年齢差の男性に向かわせる動機は、富、もしくは権力構造による強制である」