東日本大震災の発生からまもなく3カ月。日本経済が阪神・淡路大震災から早期に立ち上がった時のように、震災発生当初は、日本経済がV字回復を果たすだろうとの見方が広がった。しかし、現状、楽観的見通しは皆無となった。
福島第一原発事故の収拾が遅れていることの他に、政府の対応の拙さが楽観派を打ちのめした格好だ。
また、被災地でも遅々として復興が進んでいない。今回は、日本経済の足を引っ張る「政府リスク」と、被災者を窮地に追い込んでいる「首長リスク」に触れてみる。
「政府リスク」で投資家仰天
「通信社の速報を目にした瞬間、誤報だと思った」(外資系運用会社幹部)・・・。
政府が東電の福島原発の損害賠償支援スキームを提示した中で、枝野幸男官房長官は同社の取引銀行各行に対し、貸出債権の放棄を迫った。
先の海外投資家が仰天し、誤報だと感じてしまったことこそ、日本国民が直面している「政府リスク」なのだ。
震災発生直後、政府はメガバンクを中心に同社向け緊急融資を要請していた。その後、同社の原発対応に齟齬が生じると、一気に債権放棄を迫った。一貫性がないのは言うまでもない。加えて、株主や社債保有者への責任に言及していない点も、市場経済を全く理解していない証左として内外の投資家をあきれさせたわけだ。
「(債権放棄が)まかり通れば、銀行は他の電力会社にも貸し出しできず、一般の貸し出しについても、いつ政府から圧力がかかるか分からないため、リスクを取れなくなる」(証券会社エコノミスト)
枝野官房長官は5月23日、「(賠償支援の)条件という思いはまったくない」と発言し、国内外から巻き起こった猛烈な批判に前言を事実上撤回した。だが、一度市場に植え付けてしまった「経済オンチ」の汚名を晴らすには至っていない。