「初めて仕事を任せられるAI」
小松原:実際、Coworkを使うと、これまで使っていたSaaSアプリをユーザーの私が開くことが徐々に少なくなっています。Coworkがエージェントとして、他のSaaSのデータベースを巡回し、バックグラウンドで勝手に業務をしてくれます。
これまでのLLMはチャットベースで、AIと話をする必要がありましたが、Coworkに対しては「仕事を任せている」実感があります。ほぼ何もしなくても、仕事をやってくれるAIという役割をCoworkが広めたと思います。
いくらSaaSに内製AIエージェントが搭載されているといっても、いちいち個別のアプリを開くのは面倒ですから、Claude Coworkに投げてしまって、結果を一覧する方が利用者にとっても便利ですよね。
AIエージェントの威力は凄まじく、サイバーセキュリティやECなどにまで侵食してきています。このトレンドは止まるはずがなく、おそらく来月にはSaaS以外の領域のIT産業で「Dead説」が流れていると思います。
──AIエージェントに代替されないSaaSの特徴はあるのでしょうか。
小松原:業務プロセスを変えたSaaSを代替するのは難しいと思います。たとえばSAPのERPは、システムの導入そのものが目的ではなく、得られた深いデータを基に仕事の方法そのものを標準化し、ベストプラクティスに合わせることに主眼が置かれていました。
さらに、正確性や「AIに責任を問えるのか」という問題など、基幹システムを代替するまでには、まだ時間がかかりますし、これはAIエージェントの性質上、永遠の課題かもしれません。
例えばSAPのシステムを前提に仕事を組み立てている会社であれば、「なぜ今さらAIに変えるんだ」という不満が現場から出てくるかもしれません。一度AIエージェントに組み替えると、もう元には戻れませんから。
ただ一方で、SaaSの価値の源泉が「データベース」にある、と知れ渡ったことは、Claude Coworkの功績かもしれません。AIエージェントが直接SaaSのシステムにアクセスして業務を自動化すると、人間がログインする回数が減ります。
すると、IDベースの従業員課金モデルは今より脆弱になるかもしれません。AIがAPIを通してデータを取りにいくと、SaaSアプリに全従業員が課金する必要はありませんから。
いずれにせよ、SaaS企業はいかに「AIカンパニー」に生まれ変われるかが勝負という認識でいると思います。「この業務ならOpen AIでできるよね?」と思われないように、産業に対する深い知見や自社にしか提供できないデータ管理・分析を実装することが、最大の差別化要因になっていくのでしょう。
──シリコンバレーでは「SaaS is Dead」はどう受け止められているのですか。