今後の展開シナリオ

 第1のシナリオは、交渉決裂から軍事攻撃に至るケースである。

 この場合、米軍の作戦目標は、イランの核開発を遅延させ、革命防衛隊の能力を弱体化し、地域覇権の拡大を抑制することに置かれる。

 作戦は空爆を中心に、サイバー攻撃を併用した短期・限定的な攻撃となる可能性が高い。

 これに対しイランは、弾道ミサイルによる報復、ホルムズ海峡の緊張激化、さらにはヒズボラなど代理勢力の動員によって応戦するだろう。

 イスラエルや湾岸諸国が巻き込まれるリスクも高まる。最高指導者ハメネイ師は「攻撃されれば地域戦争になる」と警告している。

 また、米国側の議論としては、イラン指導部の中枢を標的とする作戦の可能性がしばしば取り沙汰される。

 ハメネイ師のような最高指導者の排除は、体制の混乱を招く一方で、地域全体の不安定化や報復の連鎖を引き起こす危険性が極めて高く、実際の政策判断としては大きなリスクを伴う。

 この点は、軍事攻撃シナリオの不確実性を象徴する要素といえる。

 第2のシナリオは、曖昧で玉虫色の妥協に落ち着くケースである。

 核開発の一部凍結や査察の受け入れといった限定的な譲歩と引き換えに、米国が制裁の一部を緩和する可能性がある。

 トランプ政権はこれを「勝利」と主張するだろうが、その成果がどこまで実質的なものとなるかは不透明である。

 一方、イラン側はハメネイ体制の維持を確保しつつ、地域での影響力を温存することができる。

 緊張は残るものの、全面衝突は回避され、北朝鮮が過去に用いた「時間稼ぎモデル」の限定的な再現となる可能性がある。

シナリオ別の影響:世界と日本

 軍事攻撃に至った場合、その影響は瞬時に世界へ波及するはずだ。

 まず原油価格が急騰し、ホルムズ海峡の緊張が高まることで、国際エネルギー市場は大きく揺さぶられる。

 日本にとっては、中東依存度の高いエネルギー供給が直撃を受け、経済・外交の両面で深刻な影響が避けられない。

 さらに、中東全体の不安定化は国際秩序そのものを揺るがし、米国・欧州・アジアを巻き込む広範な地政学的リスクを生む。

 一方、曖昧で玉虫色の妥協に落ち着いた場合でも、問題が解消されるわけではない。

 核開発の一部凍結や査察受け入れと引き換えに制裁が限定的に緩和されれば、イランの地域的影響力はむしろ拡大する可能性がある。

 米国は中東への関与を縮小し、地域の力学は大きく変化するだろう。

 日本にとっては、エネルギー供給の安定確保と外交戦略の再構築が不可欠となり、従来の「米国依存型」の安全保障モデルでは対応しきれない局面が訪れる可能性がある。

現在は中東地域に展開している米海軍の原子力空母エイブラハム・リンカーン(写真は2022年1月3日カリフォルニア州サンディエゴ港出航時、米海軍のサイトより)