イスラエル軍の後詰

 米軍が「第1の棍棒」として圧力を強める一方、イスラエルは「第2の棍棒」として米軍を補完する役割を担う。

 イスラエルはイラン核施設への攻撃能力を保持し、シリアやレバノンでイラン勢力を継続的に圧迫している。

 米軍の大規模戦力と並行して、イスラエルの独自行動能力が存在することで、イランに対する圧力は2重構造となり、交渉の場における米国の発言力をさらに高める効果を持つ。

北朝鮮モデルとの比較

 北朝鮮は、第1次・第2次核危機を通じて独自の交渉術を駆使し、核開発を継続してきた。

 危機を自作して交渉の主導権を握り、合意を「時間稼ぎ」に利用し、議題を核問題に限定しながら、小規模実験を積み重ねて既成事実化を進めてきた。

 さらに、複数国の足並みを意図的に乱すことで、制裁や圧力の効果を弱めるという戦術も用いた。

 しかしイランは、北朝鮮とは決定的に異なる環境に置かれている。

 北朝鮮には中国という全面的な後ろ盾が存在し、米軍による軍事行動は米中衝突に発展するリスクがあった。

 また、韓国の首都ソウルが長射程砲の射程内にある「人質構造」が、米軍の軍事オプションを大きく制約していた。

 イランには、こうした2つの抑止構造がない。

 背後に中国のような大国の庇護はなく、米軍の攻撃を自動的に抑制する「人質都市」も存在しない。

 そのため、北朝鮮型の「安全な時間稼ぎ」は成立しにくく、危機を長期化させて既成事実を積み上げる戦略は、イランにとってははるかにリスクが高い。