仏『Le Monde』も「日本版トラスショックの懸念」と題し高市氏の政策を批判的に分析し、米『Bloomberg』は「高市氏の経済政策はリズ・トラスの教訓を無視している」と断罪するありさま。

 日本では、大銀行が政府の経済政策に懸念を表明することは異例です。しかし、みずほ銀行の唐鎌大輔氏(チーフマーケット・エコノミスト)の見方は厳しいものでした。氏は「日英の条件は異なるため、トラスショックのような急激な動きが起こる可能性は低い」としつつも、こう強調しています。「『英国とは違う』と安堵するのは危うい認識だ」と。

「食料品消費税ゼロ」実施しながら、円安と物価高対策できるのか

 もっとも、金融市場や物価上昇の構造について、詳しい国民が、それほど多いとは思いません。「サナ活」などと芸能人のような応援ぶりをみせる高市首相への若い支持者のほとんどは、こうした警告は完全には理解できないでしょうし、理解しようともしていないと思います。

 この30年間の閉塞状況で、生活の苦しさに悩まされてきた若者たちは、噓でもいいから物価を安くしてくれると言う人、消費税を減らしてくれると言う人が望まれているのです。

 政治家・高市早苗は、このファン心理をよく分かっていて、公約が実現されるかどうか分からないうちに、解散総選挙をし、過半数を握ってしまえば、4年間は、じっと我慢して、国債市場の変化や物流の変化を待っていればいいと考えているように思えます。

 その証拠のひとつが、「2年間の食料品消費税ゼロ」の公約です。よく読めば、首相が決定するのではなく、そのための国民会議を開き検討すると言っているだけで、選挙期間に入ると、国民会議のことさえ触れなくなりました。

 彼女にも「英国と日本は違う」という言い分はありますが、これだけ多くの識者が反対している以上、これはかなりリスクがあることを、もっと国民に理解させた上で審判を仰ぐべきなのに、「争点から消す」という荒技で選挙を乗り切ろうとしているのです。

 もしもトラスショックのようなことが起これば、選挙で勝ったとしても、予想外のシナリオがありえます。自民党内で、財政規律重視派の議員や、タカ派で外国人排斥の傾向がある高市内閣を見限ったリベラル派の議員たちが、党を飛び出したり、あるいは野党の不信任決議案に賛成し、内閣総辞職させたりというリスクも浮上します。

 円安と物価高。この2つは、結果次第で、いつ逆風に変わるかわからない障壁です。選挙後の高市氏には、「円安」と「物価高」という2つの壁がまず立ちはだかることになります。