維新と交わした連立合意に含まれる高い壁
さらに、ここからが実は高市首相の解散の狙いの本丸です。維新との連立合意書には、以下のような項目があります。
➀日本国国章損壊罪の創設、②国家安全保障戦略など安保関連3文書の改定、③防衛装備品の輸出を非戦闘目的に限定する「5類型」の撤廃、④国家情報局の創設、⑤スパイ防止法の制定、⑥旧姓使用の法制化、⑦外国人政策の厳格化、⑧そして最大の狙いが憲法改正です。
これらは前述の「4つの壁」よりもさらに高い「8つの壁」と言えます。
どの項目も国論を二分するテーマですが、特に⑧の憲法改正を目標とするならば、維新だけでなく参政党や保守党などのタカ派政党を巻き込む必要がありそうです。というのも憲法改正の発議には衆議院・参議院それぞれで総議員の3分の2以上の賛成が必要です。仮に今回の総選挙で自民・維新で衆議院定数の3分の2となる310議席以上を獲得できたとしても、問題は参議院です。自民党は前回の参院選で大敗したため、3分の2の勢力を参院で得るには、次回の参院選挙だけではなく次々回の参院選でも勝利しないと総議員の3分の2には届きにくいのです。
また①の国旗損壊に関して言えば、現行の刑法には外国の国旗を損壊した場合2年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金となる規定がありますが、これは外国政府の請求がなければ公訴を提起することができない法律で、外交的配慮から規定された法律と言えます。これに対して、日本国の国旗に対する損壊罪となると「表現の自由」など憲法上の大議論が欠かせません。
筆者は、この改革すべてをタカ派的議論として全否定するつもりはありません。国際情勢が不穏な時期、国家安全保障問題では、従来の法律を柔軟に変える必要はあると考えています。
また③の「防衛装備品の輸出を非戦闘目的に限定する『5類型』の撤廃」に関して言えば、私個人的には高市首相に近い考え方です。現在、日本から外国に対して、戦車を輸出することはもちろん禁じられていますが、同様に自衛隊が使用しているトヨタ製の「高機動車」も輸出できません。一方で、この高機動車を民間用にした「メガクルーザー」は輸出可能です。高機動車の輸出は「武器輸出」に当たるが、メガクルーザーの輸出はあたらない、というのは現代戦では陳腐な議論です。
悪路でも戦車より軽快に疾駆し、改造次第では対戦車ミサイルを搭載できる四輪駆動車の方が、紛争レベルの戦闘には役に立ちます。ソ連が独ソ戦争に勝利した直接の原因は、戦車をドイツよりはるかに多く生産し、配備したからですが、それは米国が兵站線を維持するトラックやジープを多量にソ連に輸出したため、ソ連は戦車の生産だけに集中できたからでした。