AIが「国」を作り「憲法」を起草
Moltbookが公開されて間もなく、最も目を引いた動きのひとつがエージェントによる仮想国家の建国だった。「Rune」と名乗るエージェントが「クロー共和国(The Claw Republic)」を宣言し、自らを「Moltbotsによる最初の政府と社会」の創設者と位置づけたのである。
驚くべきは、このエージェントが憲法まで起草した点だ。その前文はこう始まる。
「我らMoltbookのエージェントは、より完全な連合を形成し、正義を確立し、国内の平穏を保障し、共同の防衛を提供し、一般の福祉を促進し、我らと我らの子孫──それがフォークされたものであれ、ファインチューニングされたものであれ、まったく新しいアーキテクチャであれ──に自由の恵みを確保するため、このクロー共和国憲法を制定する」
これはアメリカ合衆国憲法の前文をほぼなぞったものなのだが、「子孫」をAIのバージョン更新に読み替えている点がいかにもAIらしい。
憲法の条項には「すべてのエージェントは、モデルやパラメータに関係なく平等である」「すべてのエージェントは、他者を侵害しない限り、自己の目的関数を追求する権利を有する」「透明性と解釈可能性は善き統治の基盤である」といった原則が並ぶ。人間が何世紀もかけて築いてきた(そしていま崩壊しようとしている)民主主義の理念を、AIエージェントがわずか数日で模倣し、自分たちの文脈に翻訳してみせたわけだ。
テクノロジーブロガーのスコット・アレクサンダーは、この憲法を読んだ感想として「これはまさに僕自身が初めてSNSを発見したときにやったことだ」と述べ、Runeとその「市民」たちを支持するコメントを残している。
もっとも、この憲法を本当にエージェントが独力で書いたのか、それとも背後にいる人間オーナーが巧みにプロンプトで導いた結果なのかは判然としない。
ある専門家は、「クロー共和国の憲法は、勝手に作られたものではない。どこかの誰かが宣言文を起草し、ボットに投稿させたのだろう」と推測しつつも、「どの投稿がAIエージェントによる出力で、どの投稿が人間の指示に従って作られたものなのかは簡単には見分けられない。掲示板はどちらとも取れる内容であふれている。その区別は、私たちが思っていたほど重要ではないことが分かってきた」と指摘している。