さらにFはたたみかける。

「お前、東京の住居、マンションをどうするつもりや!」

 私は東京を拠点に活動を続けてきた。蓄積した取材メモや資料も残っている。

「まだ東京のマンションが残っているんだろ!」

 まるで、私財もすべて処分しろ、と強要されているようだった。

三重県では賃貸物件の契約書を「借り主」が作成・用意するのが常識なのか

「それにお前!」

 怒気を込めたFの叱責は続く。

「事務所の家賃も払ってないだろ!」

 事務所は先月に開所したばかりだった。そこは後援会長の妻が所有する3階建ての事務所ビルで、元県議の後援会長Nがいまだに2階を個人事務所として使用していた。その1階を事務所に、3階を会議室に借りた。確かに、まだ家賃は支払っていなかった。だが、それには理由があった。まだ正式な契約書を交わしていなかったからだ。

「だったら、なんで事務所を借りた契約を結ばんのや! 借りるお前が契約書を作って持っていくのが常識やろ!」

 さすがに耳を疑った。いままで様々な賃貸契約を結んできたが、いずれも貸主が借り主に契約書を示すのが当たり前になっていた。

 普通は貸主が契約書を示すのではないか。私はそう言った。

「ちゃうわ! 借りる側が契約書を作って持っていくのが常識や! お前、常識ないんか!」

 その言葉に呼応したのが、後援会長のNだった。

「そうなんさぁ」

 彼は半ば呆れたように言った。

「契約書をちっとも作って持ってこうへんから、うちのカミさんも『もう青沼さんは信用できへん』って言うとるんさぁ」

「ほら見ろ。お前が常識ないんや!」