私の歓迎会はそれぞれのあいさつからはじまり、乾杯があって、それぞれのテーブルの雑談がはじまった。
「東京のマンションはどうするつもりや」
するとすぐにTという人物が、私のところにやってきた。
落下傘候補どころか、初めての選挙でやり方すらわからなかった私は、Tにいわば秘書役として事務所の立ち上げからスケジュール調整、運転手役までをお願いしていた。Tは尾鷲市を地元とする県議だったが、前回の統一地方選挙で選挙区が熊野市などと合併して事実上、定数が減ったこともあってか(Fと競合する)、立候補をしていなかった。無論、対価を支払って、2カ月の約束で引き受けてもらった。
「青沼さん、皆さんのテーブルをまわって挨拶をしてきてください」
私は言われた通りに席を立ち、それぞれのテーブルに酒を注いで回った。ふっと見ると、空いた私の席にはTが座っていた。腕を組んで選対の幹部たちと話し込んでいた。
30人近くはいただろうか。会場をひと回りして自席に戻ったときだった。察したようにTが席を立つ。入れ替わりに着座すると、隣の選対委員長がこう言い出した。
「カネの切れ目が縁の切れ目」
そこから事務所の収支の話になったかと思ったら、いきなりあの言葉が出た。
「選挙をやりたいんなら、カネを持って来い!」
「お前、カネ持ってないんだろ!」
どうしてそんなことを言われるのか、理解ができなかった。