張又侠が台湾の離島戦など「局部戦」を提案?

 また人気チャイナウォッチャーの蔡慎坤は北京筋の話として、1カ月余り前に、内輪の会議で張又侠が習近平の解放軍の大粛清について批判的に、「我々は今、あなたがこの国をどの方向へ導こうとしているのか理解できない。これほど長い年月、もどかしさに苛まれ、軍隊も気力を失い、士気が失われている。このような状況に終わりはあるのか」と訴えた、という。そのとき習近平は内心、張又侠の忠誠を失ったと確信し、粛清を決めたのではないか、という。

 もう一つ噂レベルの話がある。張又侠の部下を名乗る匿名の公開書簡がネット上に出回っており、それによれば、張又侠が習近平に台湾の離島占領など「局部戦」の実行を提案したが、習近平はそれを拒否した、という。張又侠は、習近平の軍制改革、そして軍人大粛清の狙いが将軍たちの権力弱体化であることに気づいた。軍内大粛清に歯止めをかけ将軍たちの権力を奪還するためには戦争をするしかないが、まともな戦争を起こす力はない。だから「局部戦」を提案したのだ、という。

 内輪の会議で、張又侠は「ロシア・ウクライナ戦争、イラン情勢の不安定化に乗じて、台湾周辺の離島を占領する軍事作戦を起こすべきだ」と言い、その理由として、「現在の中国経済の悪化、社会情勢の不安定化が続けば、共産党政権維持が難しい。ここで米台、国際社会を驚かすような軍事アクションを打って出れば、少なくとも中国内向けの時間稼ぎができる」と説明した、という。

 実際、2025年11月12日付けの人民日報に張又侠の署名で寄稿された論考で「局地戦に打ち勝て」という主張が打ち出されていることを考えると、台湾の離島や南シナ海で台湾軍が実効支配している太平島占領作戦など、小規模作戦で成功の見込みのありそうな軍事アクションの実行を考えていたふしはある。

 ただ張又侠は戦争狂でもなければ、統一大業の鼓吹者でもない冷静な軍人。米空軍系シンクタンクのCASIのリポートによれば、張又侠は習近平が要求する2027年までの台湾武力統一準備を完了することは困難だと指摘する論考を国内で発表している。

 張又侠の局地戦論は、軍部のベテランとして、習近平が急ぐ台湾統一や、政策の失敗による経済不安や地方財政破綻問題に対して、局部戦を起こすことで、人民の不満をそらし、共産党体制や解放軍の全面的崩壊を回避して立て直しの時間を稼ぐ「戦略的遅延案」を提示しただけではないか、という見方もある。

 だが、張又侠がもし、本当にこういう意図で局地戦論を提案したのだとしたら、習近平は自分の軍制改革や経済政策の失敗を批判された、と感じたかもしれない。