スパイ行為、クーデター説…ガセネタか、真実か
米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)はこの件の詳細報告を受けた中国高官筋の情報として、張又侠の粛清理由について
① 中国の核兵器開発に関する核心技術データを米国に漏洩した容疑
② 李尚福国防部長昇進にかかわる収賄容疑
③ 政治派閥を形成しようとした容疑
④ 中央軍事委員会における権限乱用
⑤ 発展装備部、ロケット軍の開発予算に関連する汚職
などを挙げている。
WSJの特ダネが事実だとすれば、張又侠の罪は死刑に値する。米国スパイが解放軍軍人トップの周辺にいて、張又侠を篭絡して情報を盗み取ったとしたとしたら、それは米国の諜報能力が恐るべきものだ、ということになる。あるいは、解放軍そのものが穴だらけで軍隊の体を成していなかった、ということだろう。
もしこの特ダネが事実でないとすれば、軍内で絶大な支持と信頼を集めてきた紅二代、中越戦争の英雄の張又侠に売国奴の汚名を着せ、粛清した習近平の行為への正しさを印象づけるためのフェイクニュースといえる。中国人民も解放軍の末端兵士たちも、中国官製メディアの情報よりWSJの報道を信じる。習近平サイドがあえて、信用の高い米国一流メディアに流したガセネタ、という可能性もあろう。
軍トップを粛清した習近平国家主席の狙いは?(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
国防部は、WSJ報道に関しては「むやみに推測するな」と記者会見で答えている。
もう一つ、張又侠粛清の理由として、ネット上で噂になったのは、1月18日、習近平が京西賓館に滞在しているときに、拉致してクーデターを起こす計画を立てていたが、実行2時間前に、情報がもれて失敗した、という説だ。カナダ在住女性華人ジャーナリストの盛雪が「北京の友人」から聞いた話としてXなどに投稿していた。
彼女によれば、習近平は常に暗殺を恐れており、泊まるところを転々としていた。18日に京西賓館に宿泊する予定をつかんだ張又侠と劉振立らの部隊が習近平の身柄を押さえ政変を起こす計画を立てたが、内部の裏切りにより、その情報が実行2時間前にもれ、張又侠らは待ち構えていた王小洪率いる公安部特勤部隊らと銃撃戦になった。習近平側は9人が死亡、張又侠側も数十人が死亡した、という。
この噂も、文字通りに捉えるべきか、あるいは張又侠に政変未遂の罪を着せるためのフェイクニュースの可能性もあろう。張又侠が、「政変させられた」という見方もある。軍制服組トップの核兵器情報漏洩よりは、クーデター未遂や軍を使った暗殺未遂は中国共産党の歴史ではありがちな話ではある。