米本土防衛とそれに不可欠な西半球防衛
今次「防衛戦略」が、明確に第一優先だと位置づけているのが、米本土防衛であり、その内容には国境管理、麻薬流入の防止、ミサイル・無人機などに対する防空(いわゆるゴールデン・ドーム構想)、核抑止、サイバー防衛、テロ対策などが含まれる。
そしてこれら米本土防衛上の課題に対処するために、「北極から南米に至る地域内の緊要な地形、特にグリーンランド、アメリカ湾(メキシコ湾)、パナマ運河への軍事的・商業的アクセスを保証するための信頼性あるオプションを、戦争省として大統領に提供する」としている。
これは「安保戦略」において、モンロー主義のトランプ版(いわゆる「ドンロー主義」)として宣言された、西半球における敵対勢力排除と米国による支配の確立を具現化したものである。
これを「力」で実現しようというのがトランプ大統領の考え方であり、この「防衛戦略」もそれに従って、麻薬密輸容疑船舶を攻撃した「サザン・スピア(南方の槍)作戦」や、ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領を強制的に連行した「アブソリュート・リゾルブ(絶対的決意)作戦」を称賛している。
しかし、このような「力」による強制というトランプ主義には問題があるとしても、近隣からの直接の脅威をあまり意識しなくてよかった過去の米国とは異なり、現在の米国にとって各種の直接的脅威排除が優先課題となっているのは確かである。
いずれにしても、ミサイルや無人機、新型核兵器、サイバー攻撃、テロ攻撃、麻薬密輸、移民の大量流入などの直接的脅威を防ぐためには、米国一国ではなく近隣諸国と連携した対策が不可欠なのである。
このような国防戦略を資源戦略と絡めて、「力」を前面に押し出す強制的方法で一挙に解決しようとするドンロー主義が功を奏するかどうかは分からない。
傍目から見れば、むしろ西半球の各国と問題意識を共有し、迂遠ではあっても各国の協力を得つつ共同で対策を打って行く方がよいのではないかとも思われる。
しかしいずれにせよ、現在の米国にはもはやかつてのような余裕はなく、米本土防衛を第一優先に国防を考える必要に迫られているという現実を、日本としても直視することは必要なのだろう。