それ以外の地域での同盟国主体の防衛
今次「防衛戦略」は、西半球およびインド太平洋においても同盟国・友好国による防衛分担の増大が欠かせないとしているが、さらにそれ以外の地域においては、米国として支援はするものの、同盟国等がその防衛に第一義的な責任を負うとしている。
特にその対象地域として名指しされているのは、欧州、中東、朝鮮半島である。
欧州では、より限られた米国の支援を受けつつ、北大西洋条約機構(NATO)の同盟諸国が欧州の通常兵器による防衛に関して一義的な責任を負うよう求めている。
中東においては、同盟国がイランとその代理勢力を抑止することに第一義的な責任を負うよう求め、そのためにイスラエルを強く支援し、湾岸諸国との協力を深化するとともに、アブラハム合意(アラブ首長国連邦=UAEやバーレーン、モロッコなどとイスラエルの国交正常化合意)の上に立つ両者の統合をすすめるとしている。
朝鮮半島においては、高い防衛予算に支えられた強力な軍事力と強固な防衛産業を有する韓国が北朝鮮抑止において第一義的な責任を負うことは可能であり、米国はそれを支援するとしている。
現在のトランプ政権は、これらの施策を強引に強要している点で問題があるが、もともと欧州連合(EU)加盟国が欧州独自の防衛能力の構築を模索し、韓国においても戦時作戦統制権の米国からの移譲が課題となってきた中で、この方向性自体は同盟国の意向にも沿ったものだとは言える。
より緊密な協議を行いつつこれらの施策を進めるのならば、この方向でより安定的な世界環境を築いていこうとすること自体は妥当なのであろう。
日本としてこの戦略をどう受け止めるか
さてここまで見てきたように、この「防衛戦略」に示された3つの地域戦略は、世界における米国の力が相対的に低下し、経済的にも軍事的にも中国に対して圧倒的な優勢を保ち続けることはもはや困難だという現実の中で考え出されたものである。
トランプ政権の下で策定された「防衛戦略」という性質上、その表現はトランプ流の国際協調への非難と「力による平和」を強圧的に他国に押し付ける言辞に満ちている。
しかし、個々に示された戦略の基本的考え方自体は、たとえトランプ後に国際協調を重んじる政権が成立したとしても、大きく変わらないと考えた方がよいのではないだろうか。
だとすれば、日本としては、米政権が世界の同盟諸国から嫌われつつ孤立して強引にこれらの戦略を推し進めようとするのではなく、諸国の理解と協力を得つつ安定的にこれを達成していくという方向に向かわせる努力をすべきではないだろうか。
そのためには、欧州諸国、韓国、カナダ、オーストラリアなどと緊密な意思疎通をしつつ、協力して米国に向き合っていくことが重要であろう。