高級ホテルか安価な簡易旅館に二分されていた韓国

 韓国内のホテルを統括する東横インコリア(Toyoko Inn Korea Co., Ltd.)の代表である元ニュースキャスターの洪志銘(ホン・ジミョン)氏がこう話す。

「韓国の公務員やビジネスマン、旅行客らが日本に出張する際、よく利用したのが東横INNでした。2000年代の韓国には東横INNのようなビジネスホテルの概念がなく、高級ホテルか安価な簡易旅館に二分されていました。

 高級ホテルに宿泊できる層はシングルルームに好んで宿泊していました。旅館の場合は、2~3人が同じ部屋を使うことが多かった。ところが日本に行くと、宿泊客個々人のプライバシーが保たれるシングルルームがあり、しかもリーズナブルに泊まれるビジネスホテルという空間を経験できるのです。そのようなコスパの良いビジネスホテルを韓国で展開すれば必ずニーズをつかめると経営的に判断したわけです。

 いざ開業してみると2010年代以降、1人になれるプライベートな時間を優先したい韓国人が顕著に増えてきたため、旅行先として東横INNへのニーズが高まってきました。日本のお客様が韓国にいらした際、なじみの東横INNを選んでいただけることも多かったのです」

 日本型ビジネスホテルが韓国の宿泊文化を変えたといっても過言ではないだろう。東横INNの進出以来、韓国資本のホテルも東横INNを意識したビジネスホテルが次々と開業している。

 2017年以降、似たような業態のビジネスホテルの急増によって激しい競争が繰り広げられ、東横INNでは稼働率の低下や、コロナ禍の危機など苦難の時期があったという。それでも東横INNのコスパの良さは韓国人の間に根付いていった。東横INNをよく利用するという韓国人宿泊客がこう話す。

「ふかふかのベッドに真っ白な枕カバーとシーツ、洗面台とトイレ、浴槽がコンパクトにまとまったユニットバス、静かなエアコン、薄型液晶テレビ、スマホの充電用USBコンセント、セーフティーボックス、湯沸かし用の電気ケトル、冷蔵庫、メイク用の拡大鏡、消毒済のスリッパ、ナイトウェアなど痒い所に手が届くアイテムがすべてそろっている。しかも朝食は無料で食べ放題。こんなホテルは韓国にはまったくありません」

東横INN蔚山三山洞店の正面エントランス。深夜にチェックインする場合の宿泊料は5万5000ウォン(約5800円)と割安(写真・筆者)