さらに、イランの報復能力を軽視することはできない。IRGCは「引き金に指をかけている」と公言し、具体的な報復計画を明示している。中東全域の米軍基地への攻撃、イスラエルへのミサイル攻撃、ホルムズ海峡の封鎖、サイバー攻撃、地域の代理勢力を通じた非対称戦争。イスラエルが最も恐れる「誤算」シナリオ──イランが米国の攻撃決定は既に下されたと判断し、先制攻撃を仕掛ける──が現実化すれば、制御不能な地域戦争へとエスカレートし得る。

 では、軍事力は無意味なのか。そうではない。ただし、その役割は「体制転覆」ではなく、戦略的な圧力の維持と強化にある。トランプ政権による軍事的圧力の目的は、イランの未来への軌道が、米国の圧力に一層依存するようにすることにあろう。

崩壊への道筋──内圧と外圧による緩慢な絞殺

 ここで、より現実的なシナリオが浮かび上がる。イラン・イスラム体制の終焉は、劇的な軍事的崩壊というよりも、内圧と外圧の持続的相互作用による緩慢な窒息として訪れる可能性が高い。

 このプロセスはすでに始まっている。経済的には、25%追加関税の脅威により、中国を含む主要貿易相手国はイランとの取引を縮小せざるを得ない状況にある。1月24日に米財務省が発表した新規制裁は、制裁を回避して石油を密輸するイランの9隻の船舶とその所有者を標的としており、イラン産原油の主要な輸入国である中国次第ではあるものの、最後の収入源さえ断たれつつある。

 軍事的には、昨年6月の攻撃により、イランの核開発能力とミサイル戦力は大幅に劣化した。米国防総省は「イランは通常兵力の再建を図っているが、核開発再開の可能性も排除できない」と警告しているが、再建には膨大な時間と資金が必要であり、その間も外部からの圧力は続く。核開発を再開すれば、トランプ政権は「2025年6月と同じ事態が起きる」と警告している。

 地政学的には、「抵抗の軸」の崩壊により、イランは戦略的孤立に陥っている。シリアでのプレゼンスはシリアの体制転換とともに消滅し、レバノンのヒズボラは弱体化し、イエメンのフーシ派は米軍の攻撃に晒され、イラクでも親イラン民兵組織の影響力は低下している。イランが誇った「前方防衛」戦略──自国領土から離れた場所で敵と戦う──は、もはや機能しない。

 そして最も重要なのが、正統性の不可逆的な喪失である。今回の大規模デモが示したのは、イスラム共和国という体制そのものへの拒絶が、若者や女性のみならず、最も保守的とされるバザール商人なども含め一般のイラン国民に広範に広がっているという事実である。

 この正統性の危機が不可逆的であるという点を見過ごしてはならない。体制はもはや、イスラム革命の理念やイラン・イラク戦争の殉教者の記憶に訴えて国民を動員することができない。人口の70%を占める40代以下の世代にとって、革命は遠い過去の出来事であり、現在の抑圧を正当化する根拠にはなり得ない。