戦略的脆弱性の重層化──イランはなぜ追い詰められているのか
現下のイランは、イスラム革命体制発足以降、最も脆弱な状況に置かれている。この脆弱性は単一の要因ではなく、複数の戦略的失敗が重なり合った結果である。
第1に、「抵抗の軸」の壊滅的な崩壊がある。2023年10月7日のハマスによるイスラエル攻撃以降、イランが数十年かけて構築してきた代理勢力ネットワークは、イスラエルの執拗な攻撃によって解体されつつある。レバノンのヒズボラは指導部の拠点を失い、イエメンのフーシ派は米軍の空爆を受け、シリアのアサド政権は事実上崩壊した。イランが誇った「戦略的縦深」は、もはや幻想となった。
第2に、2025年6月の「真夜中の鉄槌作戦」による核施設への壊滅的打撃である。米軍のB-2爆撃機が世界最大級の貫通爆弾14発を投下し、ナタンズとフォルドゥの核施設を破壊した。米国防総省が今年1月24日に発表した国家防衛戦略文書は、この作戦が「完璧」であり、イランの核計画を「完全に破壊」したと誇らしげに宣言している。
第3に、2025年10月のイスラエルによる大規模空爆で、イランの防空システムとミサイル発射基地が深刻な損傷を受けた。イスラエル国防省の評価によれば、この攻撃により、イランは従来の軍事力回復に長期間を要する状態に追い込まれた。
第4に、経済的窒息が進行している。2018年以降の「最大限の圧力」制裁に加え、トランプ政権は1月13日、イランと取引するすべての国に25%の追加関税を課すと発表した。これは金融制裁から貿易制裁への移行を意味し、中国を含め第三国にイランとの経済関係断絶を迫る強力な圧力となる。通貨リヤルは史上最安値を更新し続け、インフレ率は年50%を超え、失業率は若年層で40%にも達している。
そして第5に、最も致命的なのが、国内の正統性危機だ。2025年末から始まった全国的デモは、イスラム共和国体制そのものへの根本的拒絶を意味することとなった。「米国に死を」というイスラム革命体制のいつものスローガンに代わって、イランの各地で「ハメネイ師に死を」というスローガンが大声で叫ばれ、ハメネイ師の肖像画も各地で燃やされた。IRGCの建物が襲撃され、政権の暴力装置であるバシジ民兵が市民から攻撃される事態は、体制の威信が地に落ちたことを象徴している。
イランのテヘランで行われた啓示記念日の行事の際に人々と会見したイラン最高指導者ハメネイ師。ハメネイ師はイラン国内の混乱について米国を非難し、ドナルド・トランプ米大統領を「イラン国民に与えた犠牲、被害、そして中傷の責任を負う犯罪者だ」と述べた(2026年1月17日、写真:Abaca/アフロ)