ルービンが変える演算の定義

 ハードウエア面では、次世代プラットフォーム、ルービンのフル生産開始を発表した。

 同プラットフォームは、同名のGPU(画像処理装置)や、「Vera(ヴェラ)」と呼ぶ新型CPU(中央演算処理装置)」などで構成される。

 現行世代のプラットフォーム「Blackwell(ブラックウェル)」と比べ、推論性能で5倍、トークン生成効率で10倍という飛躍的な性能向上を謳っている。

 背景には、同社が提唱する独自のデータ形式がある。

 ジェンスン・フアンCEO(最高経営責任者)は、トランジスタ数の増加が1.6倍にとどまる中で、これほどの性能差を実現した理由として、新手法の重要性を強調した。

 あわせてドナルド・トランプ米大統領は、今回輸出を容認するエヌビディア製AI半導体「H200」がルービンやブラックウェルから2世代前の製品であることを指摘し、米国の優位性に揺るぎがないことを強調している。

 グーグルや米アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)といった競合は、AIチップ市場で追撃姿勢を強めている。今回の発表は、エヌビディアが半導体エコシステム(経済圏)の囲い込みを強化する一手でもある。

 こうした演算性能の進化は、同社が2025年12月に発表した米シノプシス(Synopsys)への巨額出資とも深く結びつく。

 設計プロセスの中心をCPUからGPUへと転換させる「アクセラレーテッドコンピューティング」への移行を加速させるのが狙いだ。

 半導体設計に用いるソフトウエアを自社GPU向けに最適化することで、膨大な計算を要するシミュレーション時間を大幅に短縮した。

 かつて数週間を要した作業を数時間へと圧縮。次世代チップを毎年投入するための開発サイクル高速化に向けて、その基盤の構築を進めている。

地政学的リスクと「管理された依存」

 一方、依然として影を落とすのが対中輸出規制の問題である。

 トランプ米政権下では「売上高の25%を政府へ納付する」という異例の条件でH200の対中輸出が容認された。

 これを受け、1月13日には、①第三者機関による性能検証や、②台湾から米国を経由して手数料を徴収する特殊な出荷手順、③中国向け供給量を米国内販売の5割以下に抑える、といった厳格な運用規則が正式に施行された。

 この「上納金」は、通商拡大法232条に基づく25%の追加関税として正式に発動されている。

 200万個規模に上る同チップの潜在需要に対し、エヌビディアは増産に意欲を示している。

 一方で米国内では、高度なAIチップの提供が中国の軍近代化を助長するとの批判が、共和党議員や元政権高官から相次いでいる。

 また、製造委託先である台湾積体電路製造(TSMC)のライン逼迫や、米議会からの安全保障上の懸念といった課題に直面しているのが実情だ。

 こうした中、1月15日には米国と台湾が新たな貿易合意に達し、TSMCなどによる2500億ドル(約40兆円)の対米投資と引き換えに、台湾製品への相互関税が20%から15%へ引き下げられることが決定した。

 ハワード・ラトニック米商務長官は、台湾の半導体供給網の40%を米国内に移転させる目標を掲げ、投資に応じない企業には100%の関税を課す可能性を示唆した。

 中国政府も米国の動きを警戒し、自国企業に対して同チップの購入を研究目的などの「特殊な状況」に制限し、必要最小限にとどめるよう通達したと報じられている。

 さらには、中国の税関当局が通関業者に対しH200の輸入を許可しないと通達したことが判明しており、4月の米中首脳会談に向けた北京側の交渉戦術であるとの見方も浮上している。

 米中ハイテク覇権争いは、相互の不信感に基づいた「管理された依存」という、より複雑な局面に入ったといえる。