自維vs中道、その決定的な違いと争点
前回衆院選との最も大きな違いは「与野党のパートナーチェンジ」が起きていることだ。
前回は自民党とともに与党の座にあった公明党は、今回は野党に転じて立憲民主党と合流し、新たな野党第1党「中道改革連合」として戦う。逆に、前回は野党だった日本維新の会が、今回は自民党と連立を組んでいる。「高市支持」のつもりで公明(中道)に、「反高市」のつもりで維新に投票すれば、それぞれ間違うことになるので注意したい。
筆者は今回の「与野党のパートナーチェンジ」を、基本的に高く評価している。それまで与党(自民、公明両党)と野党(立憲民主党とその他の野党)の間にあった政治理念や基本政策の「ねじれ」が相当程度解消され、選択の基準が分かりやすくなった、と考えるからだ。
動画配信サイト「ニコニコ生放送」の党首討論会を終え、日本維新の会の藤田共同代表(右)と記念撮影する自民党総裁の高市首相=24日午後、東京都中央区(代表撮影、写真:共同通信社)
現在の自民党は非常に国家主義的な政党と化している。2012年の政権復帰以降、党をその方向に牽引した安倍晋三元首相に、高市首相は心酔している。
首相は今回の衆院解散の目的について、安保3文書(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)の前倒し改正やスパイ防止法の制定など、国家主義的な政策の遂行を掲げた。
経済政策でも「成長のスイッチを片っ端から押す」として、経済成長で国民生活を豊かにする戦略を描く。富裕層を優遇して最終的に国民全体に恩恵を行き渡させる「トリクルダウン」の手法と言っていい。
高市政権で進む株高・円安も肯定していて、首相は解散表明の記者会見で「(株高が示す)強い経済の実現は、将来の不安を安心に変える」と胸を張った。
その自民党に野党第1党として対峙してきた立憲民主党と、自民党との長年の連立を解消し野党陣営に加わった公明党が中心となり結党した「中道改革連合」は、綱領に「生命・生活・生存を最大に尊重する人間主義」を掲げ「国家より個人」を重視する。
街頭に立つ中道改革連合の野田佳彦、斉藤鉄夫・両共同代表(写真:つのだよしお/アフロ)
綱領に書かれた「持続可能な経済成長」「弱者を生まない社会」「選択肢と可能性を広げる包摂社会」といった社会像は、自民党のそれとは大きく異なる。わざわざ「国家やイデオロギーのために国民を従わせる政治ではなく」などという文言を綱領に挿入したあたり、同党がいかに「自民党との違い」を強く意識しているかが分かる。
解散を報じる24日の朝日新聞は「見据えるのは国か個か」という見出しを張り、「自維の連立与党と中道改革連合という、政治理念の違いが際立つ2大勢力がぶつかる構図」「政治理念そのものも選挙戦の大きな争点の一つ」と評した。ようやくこのように書くメディアが現れたかと思うと、実に感慨深い。
多くのメディアが十年一日のように、国政選挙の争点を「原発」「安全保障」「消費税」と繰り返すが、主要な選択肢はそんなところにはないと考えてきた。今回の衆院選では特に、政治理念、すなわち「目指す社会像」の違いを意識して、2大政治勢力の対決に注目したい。