自民が単独過半数回復なら…もう誰も高市首相を止められない?

 さて、これだけ構図が変わっているので、選挙戦の行方は従来にも増して全く読めない。ただ、選挙結果が政治の状況をどう変えるかは、全くイメージできないわけでもない。

 自維の政権与党が勝利し、特に自民党が単独過半数を回復した場合、高市政権は少数与党に苦しんだこれまでの鬱憤を晴らす勢いで、目指す政策の実現を加速させるだろう。

 記者会見で「国論を二分する大胆な改革にも、批判を恐れることなく果敢に挑戦する」と述べたのは、ある意味批判勢力への宣戦布告だ。野党のみならず、連立相手や自民党内の「反高市」勢力も振り切って進む高市首相を、誰も止められなくなるかもしれない。その時、対中関係は、円相場は、長期金利はどうなるのだろう。

 野党の中道改革連合は新党だけに、今回どれだけの議席を確保できるかは見通せない。同党の目標は自民党を上回る「比較第1党」だが、仮にそれが実現しても、ぎりぎりで上回る程度なら、「ゆ党」が自維両党との連立へと雪崩を打つ可能性があり、政権奪取は簡単ではない。

 ただこの場合、特に国民民主党は、政権寄りの玉木雄一郎代表ら執行部と、中道との選挙協力によって勝ち上がった議員との間であつれきが生じる可能性もある。

 仮に中道が自民党を大きく上回れば、選挙後に求心力が生じ、他の政党から中道への参加者が出る可能性もなくはない。昨秋の高市政権発足時と同様、首相指名選挙まで長期の混乱が生じる可能性もあり、2026年度予算の執行にさらなる影響が出ることも考えられる。

 自維両党と中道がともに振るわずに「ゆ党」や「たしかな野党」の陣地が大きく広がった場合は、自維政権の連立拡大から混乱の長期化まで、議席数によってさまざまなパターンが想定し得る。

 首相指名選挙の行方が見通せなくなった時、これまでこうした政治的駆け引きから距離を置きがちだった④の「たしかな野党」がどんな判断をするのかも興味深い。

 冒頭にも述べたように、筆者はこのタイミングで衆院選を発生させた高市首相の判断には、全く賛同できない。しかし、選挙戦そのものは、有権者が何を目指して投票するのかが比較的整理され、全体を見ればこれまでに比べ「投票しがいのある」選挙になったとも思う。

 有権者の皆さんが、これからの日本を「どんな社会にしたいのか」という大きな方向性を考えつつ、さらに選挙後に起きる政治状況も考えながら、積極的に戦略的な投票ができる、その素材として本稿が少しでも資することを願ってやまない。