3つのケースに分けて政局の展開を整理
金融市場では、主要メディアの情勢調査に加え、消費税減税を巡る与野党の論戦が注目される。特に、高市首相をはじめとする政権幹部の発言を注視する必要がある。
主要な与野党は軒並み消費税減税を公約に掲げているが、税率や期間、対象品目、財源など制度設計は異なる。
自民党は公約において「飲食料品は、2年間に限り消費税の対象としないことについて、今後『国民会議』において、財源やスケジュールの在り方など、実現に向けた検討を加速」すると掲げている。
やや不透明な実現性と財源の2つが注目される。実現性が高まり、かつ財源を赤字国債に依存する可能性が高まれば、金利上昇と円安が進行し、逆も然りという展開になるだろう。
真冬の選挙であり、地域によっては当日の天候が投票率を大きく左右する。かつては投票率が下がれば、組織票に強みを持つ与党(自民党と公明党)が有利と目されたが、今回の衆院選には必ずしも当てはまらない。組織票に強みを有する新党が設立されたことに加え、高市政権は無党派層の人気が高いためだ。投票率が高い方が、むしろ与党に有利となるかもしれない。
先述の通り、今回の衆院選で重要となる議席数のラインは、与党過半数と自民党単独過半数の2つである。以下、3つのケースに分けて政局の展開を整理する。
【衆院選後のシナリオ①:与党大勝ケース】
自民党が単独過半数(233議席)を獲得すれば「大勝」と位置付けられよう。自民党内では高市首相の求心力が高まる。2027年秋に控える自民党総裁選にも有利に臨むことができるだろう。すなわち長期政権が視野に入る。
日本維新の会と合わせた与党で絶対安定多数(261議席)も確保する可能性が高い。そうなれば、衆議院における国会運営はかなり円滑化する。ただ、参議院で過半数に5議席足りない状況に変わりはない。
2028年の参院選で過半数を目指すハードルも高い。2022年の参院選で安倍元首相銃撃事件の影響もあって自民党が大勝した議席が改選の対象となるためだ。法案成立には、主要野党のいずれかの協力を得る必要がある。国民民主党の協力が有力であろう。また、参政党の協力を得る選択肢もある。
なお、先述の通り、仮に日本維新の会が連立政権から離脱しても、国民民主党の協力を得れば法案成立は可能だ。
【衆院選後のシナリオ②:与党辛勝ケース】
与党が過半数(233議席)をぎりぎり上回る議席数にとどまれば「辛勝」と位置付けられるだろう。高市首相は続投を表明、与党の執行部もそれを支持するだろうが、自民党内での求心力は低下するかもしれない。2027年秋に控える自民党総裁選の帰趨も不透明になる。
首班指名選挙を乗り切るためにも、引き続き日本維新の会との連立政権は維持される可能性が高い。参議院で主要野党の協力が必要な状況にも変わりないが、小選挙区で対峙した中道改革連合(参議院では立憲民主党、公明党)とは組みづらい。やはり、国民民主党や参政党の協力を得る必要が生じるだろう。
【衆院選後のシナリオ③:与党敗北ケース】
与党が過半数(233議席)を割り込めば、高市首相は退陣を決断する可能性が高く、自民党総裁選が実施されるだろう。昨年の総裁選で上位だった小泉防衛相や林総務相など非主流派の候補が総裁となれば、中道改革連合(参議院では立憲民主党、公明党)も法案成立などに向けた協力相手の候補となり得る。
また、参議院の議席状況を踏まえれば可能性は低いものの、国民民主党と中道改革連合(参議院では立憲民主党、公明党)が協力して首班指名選挙に臨む可能性もある。
いずれにせよ、与党が敗北するケースでは、昨年の参院選後と同様、政局の混迷が予想される。
【宮前 耕也(みやまえ こうや)】
SMBC日興証券㈱日本担当シニアエコノミスト
1979年生まれ、大阪府出身。1997年に私立清風南海高等学校を卒業。2002年に東京大学経済学部を卒業後、大阪ガス㈱入社。2006年に財務省へ出向、大臣官房総合政策課調査員として日本経済、財政、エネルギー市場の分析に従事。2008年に野村證券㈱入社、債券アナリスト兼エコノミストとして日本経済、金融政策の分析に従事。2011年にSMBC日興証券㈱入社。エコノミスト、シニア財政アナリスト等を経て現職。
著書に、『アベノミクス2020-人口、財政、エネルギー』(エネルギーフォーラム社、単著)、『図説 日本の財政(平成18年度版)』および『図説 日本の財政(平成19年度版)』(東洋経済新報社、分担執筆)がある。