ギグワーカー保護は「絵に描いた餅」になる危険性

 中国当局はギグワーカーの困窮が社会不安や体制批判につながることを懸念し、矢継ぎ早に保護政策を打ち出している。北京や上海で配達員が事故に遭った際の補償をプラットフォーム企業に義務付けた。最低賃金と休息時間を確保できるようアルゴリズムの適正化を命じた。

 年金や医療保険への加入も促進している。しかしこれらの政策は「絵に描いた餅」になる危険性がある。社会保険への加入は企業だけでなく労働者にも保険料の負担を強いる。配達員の多くは「将来の年金」より「いま手元に残る現金」を重視するのが現状だ。

 プラットフォーム企業は配達員と直接契約せず、多くの中間業者を介しており、事故が起きた際、企業側は法的責任を回避できる(偽装下請け)。アルゴリズムが「強制休憩」を導入しても、配達が遅れると罰金が科される、または評価が下がるという根本的な仕組みは変わらない。

 失業した若者が流入するギグエコノミーという雇用の受け皿が崩壊すると体制への不満に直結する。「システムの奴隷」としての構造は当局の介入後も形を変えて存続している。そのため当局の検閲をかいくぐる「秘密相互扶助ネットワーク」も存在している。