「アンチ・アクション 彼女たち、それぞれの応答と挑戦」展示風景 東京国立近代美術館
(ライター、構成作家:川岸 徹)
1950〜60年代の日本の女性美術家の活動に焦点を当てた「アンチ・アクション 彼女たち、それぞれの応答と挑戦」が東京国立近代美術館で開幕。草間彌生、田中敦子、芥川(間所)紗織、多田美波ら14名の美術家による作品約100点を紹介する。
男性中心で形成された戦後の美術評論
1947年5月に「法の下の平等」「性の平等」を定めた日本国憲法が施行され、同年12月には民法が改正。家・戸主が廃止となり、婚姻・親族・相続などにおける女性の地位向上が明記された。こうした女性解放や女性の社会進出の機運によって、美術誌でも女性が取り上げられる機会が増加したが、美術作品を「女性」という色眼鏡を通して見るスタイルが変わったわけではない。
本展企画者、東京国立近代美術館主任研究員の成相肇は言う。「『芸術新潮』の巻頭企画「期待される新人」コーナーでは女性美術家が取り上げられるようになったが、「女性的で近代的な知性があって」(田中田鶴子評、1952年11月号)、「いかにも、女性画家らしい感覚だ」(草間彌生評、1955年5月号)、「女性の画家としてはめずらしく立体的な領域で仕事をする」(福島秀子評、1956年2月号)など、女性美術家に対する批評家の評言にはしきりと「女性らしさ」の烙印が押されている。美術雑誌で活躍する批評家がすべて男性で占められているという偏りもこうした状況に拍車をかけた」。
アンフォルメル旋風が上陸
「アンチ・アクション 彼女たち、それぞれの応答と挑戦」展示風景 東京国立近代美術館 山崎つる子 《作品》 1964年 芦屋市立美術博物館蔵 © Estate of Tsuruko Yamazaki, courtesy of LADS Gallery, Osaka and Take Ninagawa, Tokyo
だが1956年に日本に流入した「アンフォルメル(非定形)」が、美術批評の傾向を大きく変える。アンフォルメルとはフランスの批評家ミシェル・タピエによって提唱された絵画運動。従来の理性的で整然とした絵画とは異なり、制作時の身振りや速度、作品に用いる素材の物質性や質感などを強調。国籍、人種、文化的背景、性別などの差異を問わない新しい芸術として注目を集めた。
若い芸術家たちはアンフォルメルに熱狂し、日本国内でも「アンフォルメル旋風」が吹き荒れた。アンフォルメルの提唱者ミシェル・タピエが来日した際、タピエは福島秀子や田中敦子らほとんど無名だった女性作家に注目し、彼女たちを新潮流の担い手として紹介。国際的な“お墨付き”を得た女性作家たちは、男性中心だった前衛美術の表舞台に立つことになる。
だが、アンフォルメル旋風は長くは続かない。アンフォルメルがタピエの独善的キャンペーンとみなされ、短期間でブームは去ってしまう。そんなアンフォルメルと入れ替わるように、日本で注目を集めたのが「アクション・ペインティング」だ。