劣悪な賃金、乏しい社会保障、キャリアアップの機会は皆無

 フィナンシャル・タイムズ紙(昨年5月31日付)は「20年以上、胡氏は世界第2の経済大国を支える“3億人の移住労働者(民工)”の1人だった。これらの仕事に共通していたのは劣悪な賃金、乏しい社会保障、キャリアアップの機会が皆無であることだ」と紹介している。

 上海のコンビニ店員として週72時間働いた時、最大の特典は賞味期限切れの肉まんやミニ鍋、魚肉練り製品、ゆで卵を自由に食べられることだった。北京の宅配便配達員は良いエリアを「自分の領地」にするため争っていた。誰かが勝てば残りは負けるゼロサムゲームだ。

 敗者はより長い労働時間とより低い賃金に甘んじるしかない。「お客様は神様だ」とさらなるサービス提供を求めるマネージャーに胡氏は「神は1人であるべきだが、私は毎日何人もに仕えなければならない」と言い返した。

 胡氏はギグワーカーの日々やそれに伴う自分の肉体と精神の変化を日記としてオンライン上で投稿し始めた。胡氏のような書き手はエリート教育を受けた作家層とは一線を画す。「彼の誠実な自己分析は現代中国における“普通の人々”の代弁者となった」(FT紙)