無期懲役でも仮釈放、その根拠と現状は
日本では2025年6月に改正刑法が施行され、それまで存在した「懲役刑」(刑務所内での作業義務あり)、「禁固刑」(作業義務なし)の区分がなくなり、「拘禁刑」に一本化されました。確定判決の刑罰内容を画一的に続けるのではなく、更生の状況などを1人ひとり個別に見極め、より柔軟な更生プログラムを実施することを目指したものです。
これに伴い、法改正後の犯罪に対しては懲役刑・禁固刑ではなく、「拘禁●年」などの形で拘禁刑が言い渡されることになりました。ただ、山上被告による安倍元首相の襲撃は刑法改正前の2022年に起きているため、「無期拘禁」ではなく、旧刑法に基づいて「無期懲役」が求刑されました。
図表:フロントラインプレス作成
ところで、無期懲役とはどういう意味でしょうか。実は「無期」とは期間を定めないという意味であり、死ぬまで行刑施設から出られないという「終身刑」ではありません。日本の刑法には、終身刑の定めがないのです。
その一方、刑法には「仮釈放」の規定があります。「拘禁刑に処せられた者に改悛(かいしゅん)の状があるときは、有期刑についてはその刑期の3分の1を、無期刑については10年を経過した後、行政官庁の処分によって仮に釈放することができる」(第28条)。つまり、無期刑の受刑者も更生したことが確認できれば、10年後には社会に戻る可能性を残しているわけです。
これまで殺人罪や強盗殺人罪、放火(致死)罪などによって下されてきた多数の「無期懲役」は、正確に言えば、「仮釈放の可能性のある無期懲役」と表現することもできるでしょう。
では、実際に仮釈放される受刑者の状況は、どうなっているでしょうか。
法務省が公表している「無期刑の執行状況及び無期刑受刑者に係る仮釈放の運用状況について」によると、2023年末時点で在所中の無期刑受刑者は1669人。これに対し、2023年までの10年間に仮釈放された者は実数で77人でした。平均すれば1年で10人足らず。受刑者数に占める割合も1%足らずとみられます。
また、仮釈放時点における平均受刑在所期間は30年以上。2023年に仮釈放された5人の平均在所期間は45年3カ月でした。行刑施設内で死亡した無期刑の受刑者は同年までの10年間で276人に達しています。
こうした統計を見ていると、SNSなどで流布している「無期懲役の犯罪者は10年したら釈放されて社会に戻ってくる」といった言説は大げさで、実態に即していないと言えます。それでも仮釈放の制度そのものは維持されており、凶悪な犯行に手を染めた者が社会に戻ってくる可能性は消えていません。そうした社会の“懸念”を踏まえ、法務・検察当局によって作られた仕組みが「マル特無期」です。