10年に1度の改訂に向けた論点

 学習指導要領の改訂を議論するのは、文科大臣の諮問機関「中央教育審議会(中教審)」です。中教審の対象は多岐にわたるため、多くの分科会・部会を設置。学習指導要領に関する事項は「初等中等教育分科会」が担い、さらにその下に設置された部会、科目ごとのワーキンググループなどが専門的な議論を積み重ねています。

 次回の改訂に向けた「論点整理(素案)」は2025年9月、中教審の教育課程企画特別部会から提示されました。次期学習指導要領に向けた大枠の考え方を提起したもので、冒頭、「生涯にわたって主体的に学び続け、多様な他者と協働しながら、自らの人生を舵取りすることができる、民主的で持続可能な社会の創り手を『みんな』で育む」と強調。そのうえで、①「主体的・対話的で深い学び」の実装(Excellence)、②多様性の包摂(Equity)、③実現可能性の確保(Feasibility)の3点を基本姿勢として打ち立てました。

図表:フロントラインプレス作成

 このうち、①の「主体的・対話的で深い学び」のためには、情報化がますます進展するなか、生きて働いていくためには「確かな知識」の習得が一層重要になると指摘。AIの浸透や誤情報・偽情報の拡大などを念頭にデジタル学習の推進、およびデジタルの負の側面への対応も養う必要があるとしています。

 ②の「多様性の包摂」は、少子化の進展の一方で今後も外国人が急増していく状況を踏まえ、さまざまな背景を持つ子どもの個性と意欲、可能性を花開かせるとしました。先天的な資質を持つギフテッドの可能性を画一的な教育で潰さないという考えも込められています。

 ③の「実現可能性の確保」は、授業以外の業務で教員が忙殺されている実態を改善しなければならないという方向性を示したもの。45分授業を40分とすることで生じる“余白”を活用して教員の負担を減らしたり、カリキュラム編成の自由度を増して横並び教育から脱したりできる方向性も示しました。

 そして、これらを通じて、「多様な子供たちの『深い学び』を確かなものに」することが改訂の目標だとしています。

 さらに論点整理は「生成AIなどデジタル技術の発展が相まって、皆と同じことができることも重要だが、それ以上に独自の発想や視点に価値が置かれる」と言及しています。子どもたちがSNSや生成AIの負の影響に惑わされず、「正解主義」や「同調圧力」への偏りから脱却し、民主的な社会の創り手になること。そういった人生を自ら主体的に切り開いていけることが重要だと強調しました。

 論点整理の公表に際して文科省は「子どもたちの65%は将来、今は存在していない職業に就く」(キャシー・デビッドソン米国ニューヨーク市立大学大学院センター教授)や、「今後10~20年程度で、半数近くの仕事が自動化される可能性が高い」(マイケル・オズボーン英国オックスフォード大学准教授)などの予測を紹介。そのうえで「2045年には人工知能が人類を越える『シンギュラリティ』に到達するという指摘もある」と指摘し、今回の学習指導要領の改訂はそうした流れの中に位置付けられるものだとしています。