人々が対立を避け平和を望む世界へ

 そして最後に、人間の「心」の問題である。

 人間と地球、そして宇宙はばらばらではない。宇宙誕生以来の記憶と連続性は、私たち自身の中に刻まれている。

 それが「シンクロニシティ」である。

 時空を超えた人類の記憶の共有や人と自然界との共鳴現象を研究していたスイスの心理学者・精神科医カール・グスタフ・ユングと、量子力学を開拓しノーベル物理学賞を受賞しているスイスの物理学者ヴォルフガング・パウリは、1953年に「自然現象と心の構造」に存在する「シンクロニシティ」を提示した。

 そして、パウリはシンクロニシティをもたらすものは「量子のもつれ」であることを示唆した。

 空海は、その認識を曼荼羅として可視化した。曼荼羅とは、宇宙のすべてが互いに響き合い、現在・過去・未来が同時に進行している姿である。

 その中心に置かれる大日如来は、遠い神ではない。人は大日如来になりうる。

 宇宙と自己が同じ地平でつながっていると理解したとき、人は対立よりも調和を選ぶことができる。

 科学が示す「共有」「共感」「結びつき」は、空海が曼荼羅で表した世界観と響き合う。

 いま人類に必要なのは、軍事や技術の議論の前に、「自分は世界とつながっている」という認識の回復である。

 これこそが、危機の連鎖を断ち切る第一歩である。