日本の安保戦略 :複雑化するリスクを前提に

 まず認識すべきは、いま日本の安全保障環境は極めて危険であるという事実だ。

 台湾有事は、上陸戦ではなく、封鎖と制空権が主役として起こる可能性が高い。秀吉の城攻めにも似て、外から締め上げ、内側を疲弊させる形である。

 そして台湾有事は単独で終わらない。中国、ロシア、北朝鮮が、明示的であれ暗黙であれ、連動した行動に出る可能性がある。

 さらに、沖縄や日本本土の米軍基地が攻撃対象になるリスクも無視できない。米軍そのものが標的となり、事態が一気に国際戦争化する可能性もある。

 一方で、米国が非介入を選択し、台湾が中国の武力統一で終わる展開も、「あり得ない」と断言できない。

 つまり台湾有事は、極めて多層的で、複雑な危機の連鎖を生みうる案件である。ここで、欧州の経験から学ぶ示唆がある。

 2010年、ロシアのNATO加盟によって汎ヨーロッパ安全保障を築くべきだ、という構想がすでに提示されていた。

 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領自身も2002年に加盟の可能性に言及したが、NATOは真剣に検討せず、東方拡大を進めた。

 その帰結の一つが、今日のロシア・ウクライナ戦争である。

 本来、EU(工業・製造)とロシア(資源)は相互補完関係にある。フランスとドイツが長年の対立を乗り越えてEU・NATOを築いた歴史を思えば、「不可能」と断定する理由はない。

 この発想は、日本にも応用し得る。日本は米国と緊密に連携しつつ、緊張緩和(デタント)を軸とする新しい安全保障像を提示すべきだ。

 たとえば、ノーベル賞などの成果を重視する米国指導者(トランプ大統領など)から、ロシアNATO加盟の再検討を提案してもらう構想である。

 そこに日本自身のNATO加盟を重ね、台湾問題は中国と台湾の間で非武力的に処理し、最終的には中国もNATO的枠組みに参加する——。

 短期に実現する話ではない。しかしこれは、対立構造そのものを根本から転換する長期目標 になり得る。

提言3:「軍事だけに依存しない」包摂型秩序の構想を、日本が積極的に提示すること。