社会主義経済システムの維持が困難に?
2024年の中央経済工作会議では、「不動産市場の落ち込みを食い止め安定させよ」、という指示が出ていたが、今年は単なる「不動産市場の安定化につとめよ」という表現にとどまっている。2024年は需要側の刺激に重点を置いた政策が打ち出されていたが、今年は、都市ごと、地方ごとに、供給増加の抑制、在庫削減、供給の最適化の指示が出ている。つまり、2026年、不動産業界の回復は目標とされていないのだ。
さらに、10年ほど前から検討され続けていた固定資産税(不動産税)がいよいよ実施されるというシグナルが出ている。
2025年11月に行われた財新経済サミットで楼継偉(元財政部長)が「不動産税に関する全国人民代表大会の立法作業は完了し、難点は基本的に解決された。第18期中央委員会第3回全体会議の精神に基づき、適時に導入される予定である」と発言。そうなれば、人々の不動産購入意欲はさらに減退するだろう。
中国の国内総生産(GDP)に占める建設業単体の割合は約7%前後だが、不動産業界全体ではGDPの約3割程度を占める。習近平は中国経済のけん引力を、建築、不動産業などのオールドエコノミーから人工知能や再生エネルギー、バイオ医療や量子コンピューター、ドローンなどいわゆる“ハイエンド産業”に転換させていく方針を強調している。さらに内需主導で強大な国内市場を建設する、とうたっている。こうした方向性は、15次五カ年計画でも2025年中央経済工作会議などで打ち出されている。
だが多くの雇用を生み、人々の安定した所得を約束し、その生活を支えるのは今なお不動産業界にけん引されるオールドエコノミーだ。それを破壊してしまっては、ハイエンド産業を発展させる資本も人材も枯渇するのではないか。
そもそも、中国が不動産という経済牽引力の柱を捨て、さらには国有企業神話まで破壊すれば、「中国の特色ある社会主義経済システム」を維持できるのか。
AIやドローン産業など華々しい部分をクローズアップし、「中国経済がすごい」というイメージが相変わらず喧伝されている。しかし、中国のオールドエコノミーが崩壊し、失業者が大量に生まれ、消費の縮小が深刻化していけば、いずれは、このアンバランスさからくる社会動揺、庶民の不安が抑えきれなくなるだろう。その時限爆弾が2026年のいずれかのタイミングで破裂するかもしれない。
福島 香織(ふくしま・かおり):ジャーナリスト
大阪大学文学部卒業後産経新聞に入社。上海・復旦大学で語学留学を経て2001年に香港、2002~08年に北京で産経新聞特派員として取材活動に従事。2009年に産経新聞を退社後フリーに。おもに中国の政治経済社会をテーマに取材。主な著書に『なぜ中国は台湾を併合できないのか』(PHP研究所、2023)、『習近平「独裁新時代」崩壊のカウントダウン』(かや書房、2023)など。