中高年の恋愛模様を描いた小説やテレビドラマ、映画が注目を浴びている(写真はイメージ、aomas/Shutterstock.com)
(砂田 明子:フリーランスライター、編集者)
50代、60代の恋愛ドラマが話題「さみしくない大人なんていない」
恋愛ドラマの主人公たちの年齢が、近年、上がりつつある。20代から30代、40代へ、そして今年は、50代以上のドラマが話題を呼んだ。若者のテレビ離れの影響もあるだろうが、社会の高齢化や生き方の多様化が進み、映像作品において、恋愛は若者の特権ではなくなったのだろう。
今年放送された大人の恋愛ドラマの一つに、『続・続・最後から二番目の恋』がある。小泉今日子演じる吉野千明と中井貴一演じる長倉和平の年齢は、キャストの実年齢にほぼ合わせて設定されている。2012年に放送されたシーズン初回では千明45歳、和平50歳だった。2014年の「続」で48歳、52歳、そして今年2025年の「続・続」では59歳、63歳となった。
千明と和平のつかず離れずの大人の関係を軸に、シーズンが進むにつれ、時代を反映するように、従来の「恋愛」という言葉ではくくり切れないような多様な関係性が描かれたと感じる。
一方、このドラマには、「さみしくない大人なんていない」というフレーズが一貫して流れていた。大人になったからといって何かが、あるいはすべてが解決するわけではない。そんなメッセージに、多くの大人は慰められ、勇気づけられたと思う。
2014年に放送された「続・最後から二番目の恋」ではファンミーティングも開催された(左から安藤優子、飯島直子、小泉今日子、中井貴一、内田有紀/写真:産経新聞社)
テレビドラマでいうと、もう一つ、『しあわせな結婚』も面白かった。長く独身を貫いてきた阿部サダヲ演じる50代男性が、松たか子演じる45歳のナゾの女性と電撃結婚するところから幕をあける。
「ひとり」が好きだった売れっ子弁護士の運命が、「だれかと生きること」で、急カーブを描くように変容していく。大人はひとりでも生きられるけれど、だれかと生きるのもまた尊いと、心に染みわたるドラマだった。