イラン政府がガソリン価格値上げ、国民の怒りが爆発する?
足元の弱含みの展開はOPECプラス(OPECとロシアなどの大産油国が構成メンバー)にとって大きな誤算だ。来年第1四半期の増産停止を決めているが、第2四半期以降も慎重な対応が求められる。
OPECプラスが窮地に追い込まれる中、筆者が注目しているのはイラン情勢だ。
イラン政府は13日、タブーとも言えるガソリン価格の事実上の値上げに踏み切ったからだ。
イランでは安価なガソリンは国民の当然の権利とみなされているため、2019年にガソリン価格を引き上げた際に大規模デモが発生した。国民と治安当局との衝突が相次ぎ、300人以上が死亡したと言われている。
これに懲りたイラン政府はガソリン価格の引き上げを先送りしてきたが、年間500億ドル(約7兆8000億円)規模に及ぶ補助金の重荷に耐えられなくなり、ガソリン価格を引き上げざるを得なくなった。
イランの今年のインフレ率は40%を超え、12月上旬から各地で抗議デモを繰り広げている最中のガソリン価格の値上げは最悪のタイミングだったと言わざるを得ない。12月に入っても深刻な水不足が続いており、政府への怒りがさらに高まる事態となれば、イランの地政学リスクが再び材料視される可能性は十分にある。
「たかが中東、されど中東」。日本の原油確保に欠かせない中東情勢について、今後も高い関心を持って注視すべきだ。
藤 和彦(ふじ・かずひこ)経済産業研究所コンサルティング・フェロー
1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。