緊迫のベネズエラ情勢、原油価格押し上げ効果は?
ブルームバーグは17日「米政府関係者はロシアの石油を輸送する『影の船団』やその他の仲介業者に制裁を科す可能性を検討している」と報じた。追加制裁によってロシアの石油・ガス収入がさらに減少するのは確実だ。
予断を許さない状況が続いているが、ロシアの継戦能力は落ちてきており、和平合意がまとまる可能性が高まっていることは間違いないだろう。
ロシアに代わり原油価格を下支えしているのは、ベネズエラの地政学リスクだ。
トランプ米大統領は16日「ベネズエラを出入りする制裁対象の石油タンカーを全面封鎖する」と自身のSNSに投稿した。これに対し、ベネズエラ政府は海軍に石油タンカーの護衛を指示しており、周辺海域はにわかに緊張が高まっている。
米国が先週、制裁対象のタンカーを拿捕して以来、ベネズエラの原油輸出は落ち込んでいるようだ。ロイターは17日「運航企業の大半が拿捕されることを恐れて石油タンカーをベネズエラ海域に停留させているため、輸出量は11月の日量90万バレル超から急減している」と報じた。
これらを材料に原油価格は上昇に転じたが、筆者は「1バレル=60ドル台に上昇させる効果はない」と考えている。
ベネズエラ経済への打撃はたしかに大きいが、同国産原油の主な購入者である中国への影響は少なく、世界の原油市場に与えるインパクトは小さいとみられているからだ。
ロイターは15日「専門家は『タンカー拿捕前に大量のベネズエラ産原油が中国に向かっており、12月と来年1月の輸出は大幅に増える』と指摘している」と報じた。
来年2月以降、ベネズエラ産原油が手に入らなくなったとしても、中国の原油輸入に占めるベネズエラ産の比率は4%程度に過ぎない。原油備蓄も豊富なため、中国が代替先を慌てて見つける必要はない。
米エネルギー情報局(EIA)が17日に「ブラジル、ガイアナ、アルゼンチンの3カ国全体の原油生産量は来年、日量80万バレル増加する」との予測を発表したように、他の中南米産油国の好調さもベネズエラ要因を緩和している。
市場がベネズエラの地政学リスクに反応しなくなるのは時間の問題であり、そうなれば、原油価格は再び下落傾向に戻るだろう。