「投資商品」へ金融庁で規制協議
金融庁の「暗号資産制度に関するワーキング・グループ(WG)」が12月に公表した報告書では、暗号資産が国内外で明確に“投資対象”として位置づけられつつある現状を踏まえ、利用者保護と市場の健全性確保を目的とした包括的な規制設計の方向性が示された。
とくに、暗号資産の投資目的での利用が急速に拡大していることに対し、従来の資金決済法ベースの枠組みだけでは十分に対応できないとの認識が強調されている。
WGでは、暗号資産を金融商品として扱う必要性が議論され、金商法(金融商品取引法)の適用範囲に本格的に組み込む方向で整理が進んだ。背景には、誤解を招きやすいホワイトペーパーのばらつきや、中央集権的管理者(発行体)が存在するトークンにおける情報格差、交換業者側の説明不足など、利用者保護上の制度的な弱点がある。
報告書では、発行者に対して正確かつ比較可能な情報提供を義務づけ、継続的な開示を標準化するべきとの方針が示されたほか、交換業者についても、取扱審査や利益相反管理、適合性確認といった業務規制を強化する方向性が示された。
さらに、無登録業者やDEX(分散型取引所)への対応も重要な論点となった。海外無登録取引所での被害が増加していることを踏まえ、国内居住者への実質的なサービス提供を行う主体には規制を及ぼすべきとの立場が示されており、必要に応じてエンフォースメントを強化する方針も打ち出された。
他方で、技術的に匿名性が高いDEXなどへの規制には限界があるとして、過度に実効性の低い規制を拡大するのではなく、まずはリスク周知やフロントエンド提供者への最低限の義務付けから段階的に制度を整備する方向が示唆されている。
これらの議論は、単に規制を重くするためのものではない。むしろ、国内市場の透明性と信頼性を高め、正規の事業者や金融機関が参入しやすい環境を整えることで、長期的な市場発展の基盤を築くことを目的としている。
WG報告書でも、利用者保護とイノベーションの両立が制度設計の前提であることが繰り返し強調されており、情報提供の標準化やAPI化、自主規制機関との役割分担など、過度な負担を避けつつ実効性を高める方向性が示されている。
こうした制度整理が進むことで、暗号資産を巡る国内ルールはようやく国際的な議論に歩調を合わせる段階に入り、投資商品としての扱いに必要な基盤が整いつつある。