画面中央でマイクを握っているのがまつもとゆきひろ氏(イベント関係者撮影、以下同じ)

Rubyの開発者も驚く生成AIの革新

目次

 12月5日に大阪で開催された「Rubyビジネス推進協議会10周年記念イベント」は、技術者だけでなく経営者にとっても深い示唆に満ちた場になりました。

「Ruby」は、誰でも簡単に扱えるように工夫されたオブジェクト指向プログラミング言語で、まつもとゆきひろ氏が1995年に開発しました。Rubyは日本初の国際規格となり、世界中の開発者が利用しています。

 日本のソフト開発における草分け的な一人である、まつもとゆきひろ氏が今回、AIを前提にした時代への率直な驚きと期待を語り、記念イベント会場は驚きの声で包まれました。

 まつもと氏は、まさかコードを一切見ずにAIを使って開発する日が来るとは思わなかったと言い、現在は米アンソロピックが提供している「Claude Code」を活用していると明かしました。

 さらに、まつもと氏はRubyのバージョンアップも9割方AIで実行できると言うのです。もはや、ITの開発現場は既に人間中心からAI中心へ構造転換していると言っても過言ではありません。

 同イベントのセッションでは、高畑道子理事長が、AIの登場以降、新入社員を採用しなくなったと語りました。

 これは決して特殊な判断ではなく、国内外の企業で静かに広がっている潮流です。

 従来のように一人前になるまで時間と教育コストが必要な若手を大量に採用するのではなく、AIを前提にした少人数精鋭のチームが職場の主流になりつつあります。

 AIが定型業務を代替し、多くの文書作成やコード生成を即時にこなしてしまう現場では、人間の役割が根本から問い直されています。

 私はこの話を聞きながら、車が登場した時代を思い出しました。

 歩行を効率化するのではなく、車は人間が歩いても到達できない遠い世界へ連れて行ってくれたのです。