「AI革命」か「着実な拡大」か、競争は新局面へ

 この動きは、激化するロボタクシー開発競争の文脈で捉える必要がある。

 ウェイモはこれまで、LiDAR(レーザーレーダー)と高精細マップを駆使し、都市ごとに徹底した安全検証とデータ蓄積を行う「着実な拡大」戦略を採ってきた。

 今年7月には完全自動運転での累計走行1億マイル(約1億6000万キロ)を達成し、10月には欧州(英国ロンドン)への進出計画も発表している。

 今回の高速道路サービス開始は、この戦略の論理的な帰結といえる。

 一方、競合の米テスラは、カメラ映像をAIで解析する「エンド・ツー・エンド(E2E)AI」方式を採り、より安価かつ急速な世界展開を目指す「AI革命」を掲げる。

 テスラもサンノゼ空港への配車サービスを提供しているが、現状ではドライバーの乗車が必要であり、ウェイモが実現した「完全無人での有償高速道路サービス」とは技術的な段階が異なる。

 競争の波はウェイモの本拠地にも押し寄せている。

 米アマゾン・ドット・コム傘下の米ズークス(Zoox)が11月中旬、ラスベガスに続きサンフランシスコでも一部利用者への配車を開始した。

 同市でウェイモ以外の無人ロボタクシーが競合するのは初となり、覇権争いは多角化している(米CNBCの記事)。

 対するウェイモも拡大の手を緩めない。

 今後は高速道路での運行能力を、既にサービスを展開するオースティンやアトランタに拡大するほか、2026年にはダラス、ヒューストン、マイアミなどテキサス、フロリダ両州の計5都市へ新たに参入する計画も11月18日に明らかにした(米CNBCの記事)。

 さらに同社は11月20日、寒冷地のミネアポリスなど3都市でも手動運転による走行試験を開始すると発表した。

 これらが順調に進めば、2026年の拡大計画は計15都市に達する見通しとなり、全米規模での展開が加速する(米CNBCの記事)。

 今回の高速道路への進出は、ウェイモが先行する「レベル4」(特定条件下での完全自動運転)の技術と安全性を実用レベルで証明し、競合他社に対するリードを広げた形だ。

 都市内の複雑な移動の次に、都市間を結ぶ高速移動という、より大きな市場が視野に入ってきた。

 ウェイモの慎重かつ着実なアプローチが、テスラが目指すAI主導の急速な普及モデルに対し、いかに商業的な優位性を築けるか。ロボタクシーが日常の風景となる日に向け、両社の戦略の違いが一層鮮明になるだろう。

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