生命保険料控除への対応は「日本版DOGE」の試金石

 個人的には、生命保険料控除は国民のため、社会のための制度というよりは、生命保険業界のための制度だと認識しています。要は、生保営業のサポートをするための減税措置ということです。

 住宅ローン控除も同じといえば同じかもしれませんが、その裏に「自分の持ち家がほしい」という国民の切なる願いが確かにある住宅ローン控除に比べ、「もっと生命保険に入りたい!」という国民の声があるようには思えません。やはり、ほとんど貯蓄と変わらないような保険商品を、「まだ保険料控除の枠が残ってますよ、節税できますよ」といって営業のために使っているというのが実態でしょう。

 生命保険会社は現在41社ありますが、その総資産は429兆円、経常利益は3.2兆円に上ります(2025年3月末時点)。はたして、そのような業界に本当に減税措置が必要なのでしょうか?

 日本版DOGEではEBPM(Evidence Based Policy Making)というワードも出てきています。これは「根拠に基づいた政策立案」を意味するワードですが、「学資保険に加入するとなぜ所得控除になるのか」、「変額保険に加入するとなぜ所得控除になるのか」という疑問にしっかり答えられなければなりません。

 生命保険業界のいうように、子育て世帯に対して生命保険料控除を拡充するというのは確かに一理ある主張でしょう。一方で、生命保険料控除の対象とすべきでない保険商品が大量に紛れ込んでしまっているおそれもあるのではないでしょうか?

 生命保険料控除は、日本版DOGEが本当に国民の期待に応えて国の財政の非効率を正す組織となるか、それともただ「やってる感」を出すだけの目くらましのような組織で終わるかの試金石になるでしょう。

 願わくは、政治と生命保険業界のもたれあいを廃し、真にあるべき保険料控除に関する税制がどういったものかについて、ぜひとも真剣に検討してもらいたいと思います。

 とはいえ、十中八九、「生命保険料控除は租税特別措置法ではなく所得税法(と地方税法)上の制度なので、今回の検討の対象ではない」という、木で鼻をくくったような対応になるだろうなと半ば諦めてはいますが。