必需品でない商品も生命保険控除に紛れ込んでいる

 確かに、生命保険には必需品としての性格はあると思います。子育て世帯であれば、死亡リスクに備えて生命保険に入っておくべきであるというのは事実でしょう。しかし、DINKsのように、そうした死亡時のリスクがほとんどないような世帯にまで生命保険料控除を適用するのは果たして合理的なのでしょうか?

 前述したように、23歳未満の扶養親族がいる場合は生命保険料控除の上限を増やすことができるわけですから、逆に扶養親族がいない場合は生命保険料控除をしないということもできるでしょう。

 また、一般生命保険料控除には、学資保険のように必需品とはいいがたい商品や、変額保険や変額年金のような、事実上の投資信託のような商品も生命保険料控除の対象になります。

 そして、介護医療保険料と個人年金保険料については、ほとんどすべての対象商品が必需品とはいいがたい商品です。必需品といえるのは一部の介護保険くらいでしょうか。そもそも貯蓄で対応した方が得な入院日額いくらの医療保険はあえて減税措置を講じてまで加入を促す意味はありません。

 個人年金についても、本質的な意味で長寿リスクに備えることのできる終身年金ならばおおいに加入を促す意味はありますが、単なる貯蓄にすぎない個人年金はそちらに家計の資金を流すくらいならiDeCoに資金が移動するようにするのが望ましい制度設計でしょう。

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 どちらの枠も減税対象となる商品の大半は必需品としての性質が希薄な入院保険や定額年金でしょうから、本当に効率的な税制を追求するのであれば、保険料控除の対象となる商品は厳選すべきでしょう。

 現状は、生命保険料控除は「もうちょっと生保控除の枠が余ってるんで、学資保険とか個人年金とか入りませんか?これは貯金と同じなんであとでもどってきますよ、賢く節税しましょう!」という営業に使われているというのが実態でしょう。