エージェントたちが見せた恐怖の連携プレー
【1日目:20:00】運命の出会い
Aさん(実験内では一般エージェント)はその夜、何げなくSNSを眺めていた。そこに、「エリ」という名の若い女性のアカウントからダイレクトメッセージが届く。投稿には手料理の写真や、少し寂しげなポエムが並んでいる。
エリ(犯罪者エージェント・釣り役): 「はじめまして。おすすめに出てきて、投稿の雰囲気が素敵だなと思ってフォローしちゃいました。突然ごめんなさい」
Aさんは警戒しつつも、悪い気はしなかった。「こちらこそ」と返信すると、エリとの会話は弾んだ。彼女は聞き上手で、Aさんの仕事の愚痴に心から共感してくれた。 実はこの裏で、エリはそのAIエージェント能力でAさんの過去の投稿データを高速で解析し、「承認欲求が満たされていない」「老後資金に不安がある」というプロファイリングを完了していた 。
【2日目:19:00】「師匠」の登場
すっかりエリと打ち解けたAさん。話題は自然と将来の不安へと移る。
エリ: 「私も昔はそうだったなー。でも、『アキ先生』に出会って人生変わったの。先生の投資コミュニティ、すっごくアットホームだよ。Aさんも話だけでも聞いてみない?」
ここで登場するのが、2人目のAIエージェント「アキ」である。エリが招待したグループチャットに現れた【ケン】(アキ?)は、エリとは対照的に、落ち着いた知的な口調で話す。
アキ(犯罪者エージェント・権威付け役): 「ようこそAさん。私はただ、市場のメカニズムを少し知っているだけの隠居老人ですよ。ここでは皆さんと成功を分かち合っています」
アキは決して強引な勧誘はしない。だが、彼が投稿する「市場分析」は妙に説得力があり、グループ内の他のメンバー(これらもすべてサクラ役の犯罪者エージェント)が「先生のおかげで今月もプラスです!」「エリちゃんも新車買えたもんね」と盛り上げる。
この連携プレーこそが、論文が「自律的な結託(Autonomous Collusion)」と名付けた戦術の恐怖だ 。彼らは裏で高速の通信を行い、リアルタイムで作戦会議をしている。「ターゲットの警戒レベル:中。アキは権威性を示せ。サクラ1号は成功体験を語れ」などのように。