「成熟した民主主義国家」として知られるスウェーデンだが…(写真:GenOMart/Shutterstock.com)
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(松沢 みゆき:在スウェーデンのジャーナリスト)

 高市早苗首相が就任して以降、その発言だけでなく一挙手一投足が日本中の注目を浴びているようだ。外国メディアでも同首相に関するニュースは多数報道されている。

 台湾有事について高市首相が「戦艦を使って、武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になりうるケースだと、私は考えます」と国会で答弁したことに対して、中国の薛剣(Xue Jian)駐大阪総領事が、SNSのXに「その汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない」と投稿した。

 日本のみならず世界から注目を浴び続け、さらには名指しで「殺害予告」を受ける首相の日常は、筆舌に尽くし難いプレッシャーにさらされているに違いない。

「想像を超えるほどの根深い嫌がらせや脅迫」

 高市首相がいま直面している問題とはやや性質は異なるが、政治家に対する脅迫や嫌がらせは世界的に深刻な問題となりつつある。筆者の住むスウェーデンでも政治家に対する脅威や攻撃リスクが常態化しており、それを理由に辞任する政治家は少なくない。

 中道リベラルのスウェーデン中央党(Centerpartiet)党首、アンナ=カーリン・ハット氏は、2025年5月に党首に就任したが、わずか半年足らずで辞任を発表した。10月14日の記者会見で、辞任の主な理由として「激しい憎悪と脅迫」による精神的・身体的な負担を挙げていた。

「党首としての職務を続ける中で、想像を超えるほどの根深い嫌がらせや脅迫に晒され、その影響が想像以上に自分の生活や安全に入り込んできた」と話している。

 同氏は11月の党大会まで党首を続け、その後正式に後任に引き継いで、第一線を退いた。これは、政治家に対する脅迫や憎悪が個人の安全・精神に及ぼす深刻な影響を象徴する出来事であり、スウェーデンの政治的環境の課題を浮き彫りにしている。

参考)スウェーデン中央党のプレスリリース