プロンプトを書くには哲学的思索が必要
この知能のウエブでは、経営者や研究者だけでなく、誰もが知能の設計者になります。
AIを導入するというと、多くの企業は便利なツールを取り入れる感覚でとらえがちです。けれど、本当の勝負はそこではありません。
大切なのは、自社の価値観や判断基準を、AIにどう伝えるかです。
例えば、どのようなリスクを許容するのか、どんな顧客体験を最優先するのか、判断において社内が大切にする姿勢は何か。
これを曖昧なままAIに触らせると、企業ごとに異なる「判断の癖」がAIに反映されず、結局、他社と同じようなAIしか作れません。
プロンプトを書くという作業は、実は思っている以上に哲学的です。
結論だけを求めるのではなく、なぜその結論に至るのかを明文化しなければなりません。これは、いわば企業の人格をAIに翻訳して伝える作業です、
かつて、HTMLを理解した人が企業のウエブ戦略を支えたように、これからはGPTを設計できる人が企業のAI戦略を支えていきます。
私はこのような人を思考の建築家と呼んでいます。プログラマーではなく、価値観や判断の骨組みを造る役割を持つ人たちです。
AIに渡すプロンプトは、一つひとつが思考のスナップショットです。書いた瞬間の価値観や判断、経験を切り取り、それをAIの内部に積み重ねていきます。
AIは検索エンジンのように情報を探すだけではなく、人間が積み上げた思考から学び、それを再構成して返すのです。
その姿はまるで、人類が外側にもう一つの脳を作り始めているようにも見えます。
筆者作成