部署ごとにAIを導入してはいけない

 私が講演でその話をすると、多くの経営者が目を丸くして「これ、もう始まっちゃってるんですね」と驚かれます。

 はい、もう始まっています。しかも、静かに、私たちが気づかないうちに動いているのです。

 この流れの中で、AIは社会のインフラとして働き始めています。電気が常に背後で動いているように、AIもまた日常の裏側で思考を支え始めているのです。

 メールの返信案を作ったり、商談準備を整えたり、社内規程に即した判断をまとめたり、経営企画の骨子を出したり・・・。気づけばAIは様々な業務の背後で働いています。

 しかし、ここで問題が一つあります。

 AIを一つひとつバラバラに導入してしまうと、企業内部に性格の違うAIが乱立してしまうのです。A部署のAIは慎重派、B部署のAIは楽観的、C部署のAIは厳格など。

 そんな状態が生まれたら、混乱するのは社員の皆さんです。

 人間が情報を整理するためにHTMLという統一言語が必要だったように、AIにも統一した思考の構文が必要になります。それがプロンプトであり、カスタムGPTの存在意義です。

 同じ企業文化のもとで動くAIを複数つなぐことで、初めて知能のウエブが企業内部に生まれます。

 AIは技術でありながら、人間の思想も映し出すのです。どんな価値観を教えるかによって、AIが出す答えの方向性が大きく変わります。

 プロンプトに慎重さを入れるか、挑戦を評価する姿勢を入れるか、倫理の基準をどう書くか。これらがすべてAIの人格を形作っていきます。