オフショア法人ネットワークを通じて資金洗浄
ミダス作戦ではエネルゴアトムを舞台にした約1億ドル規模のリベートと資金洗浄スキームが浮き彫りになった。NABUとSAPOは24年に捜査を開始、今年11月10〜11日に一斉捜索に踏み切った。捜査対象はエネルゴアトムの調達・支払いをコントロールする陰のグループだ。
原子力関連の工事・機器・サービスを受注したい業者に契約額の10〜15%のリベートを要求。応じない業者には納品済みでも支払いを停止し、将来の入札から排除。受け取った資金はキーウの秘密オフィスを拠点に管理し、オフショア法人ネットワークを通じて資金洗浄していた。
NABUは約1000時間の通話録音を公開。30億フリヴニャ(約110億円)の契約で10%のリベートに対して関係者は「少なすぎる」と不満を漏らし、リベートを15%に引き上げるまで新たな40億フリヴニャの契約を遅らせようと密議していた。
調達プロセスを人質にリベート率を引き上げる悪質さが明らかになった。捜査線上に浮かんだのはゼレンスキー氏の旧友でコメディ制作会社「クヴァルタル95」共同オーナーのティムール・ミンディチ氏、元エネルギー省補佐官で原子力部門の監督役イホル・ミロニュク氏。
エネルゴアトムのセキュリティー担当エグゼクティブディレクター、ドミトロ・バソフ氏。ウクライナ最高議会のアンドリー・デルカチ元議員(現ロシア上院議員)の一族が所有するオフィスで資金管理や二重帳簿の作成、オフショア口座を使った送金が行われていた。
エネルゴアトムで役職を持たない「影のマネージャー」たちは入札・契約・決済の実権を握っていた。年2000億フリヴニャ(約7400億円)超の売上を誇る戦略企業が公式の経営陣ではなく「影のマネージャー」たちによって支配されていた。